ブラジリアン柔術がリアルファイトで機能しない3つの理由

ブラジリアン柔術がリアルファイトで機能しない3つの理由

いつも心に1兆個の乳酸菌を。どうもサイコ田中です。

世界で性別・年齢問わず競技人口の多い格闘技を挙げろと言われたとき、

ボクシングや柔道、空手などに並んで必ず名前が出てくるのがブラジリアン柔術です。

日本でも幅広い年齢層の人々に愛され、今でも技術の進歩が続くブラジリアン柔術ですが、

護身術として用いるのは、少し難しいかもしれません。

何故でしょうか?


リアルファイトに寝技の出番はない?

私は若い頃から様々な場所で路上トラブルやリアルファイトの現場に遭遇してきましたが、

(バウンサーという職業柄、当然と言えば当然なのですが)

寝技の攻防が展開されるファイトをまだ一度も見たことがありません。

馬鹿馬鹿しいほどわかりきったことですが、ケンカなのですから、

掴みあった体勢や両者ともに膝をついた状態から、

わざわざ相手の腕や足の関節を極めにいく意味があまりないのです。

相手の顔面や腹部がすぐそこにあるのですから、とにかくパンチを叩き込むか、

黙って頭突きでもお見舞いしたほうがよほど効率的に違いありません。

また首尾よく相手の腕や脚に技をかけることができても、

相手は動くのをやめません。

護身の目的は常に、相手を今すぐその場で倒すことです。

ブラジリアン柔術で相手の動きを完全に止めるためには結局のところ、

「折ってしまう」しかなく、過剰防衛に問われるリスクが高くオススメできません。


ブラジリアン柔術だけでは身を守れない3つの理由

ここでは路上のトラブルにおいてブラジリアン柔術(以下BJJ)では自己防衛に不十分と考えられる理由について、

技術的な観点など3つの側面から解説していきたいと思います。

***BJJの技術体系を「役に立たない」「使えない」などと否定したり批判する意図は全くありません。

あくまでも一個人の意見として、リアルファイトには不向きであるという見解を示しているに過ぎませんが、

もしも不快に思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。***

 

環境に左右されすぎる

あなたが戦うのは、丁寧に消毒されたマットの上ですか?

審判が試合を取り仕切り、セコンドのサポートを受けることができるリングの上でしょうか?

答えはNOです。

想像してみてください。

硬くざらざらしたアスファルトの上で寝技を仕掛けに行ったとき、

もしも相手が力任せに技を外そうとしてあなたの身体を少しでも引きずったとしたら、

それが背中でも膝でも、当然のことながら無事ではすみません。恐らくかなりひどい擦り傷になるでしょう。

またしっかりと踏ん張りが効き、ある程度の衝撃を吸収してくれるマットの上とは違い、

リアルファイトの舞台は砂の上や、水にぬれた芝生の上になるかもしれません。

このような環境では、普段の練習で当たり前のように出来ていることも困難になり、

本来の力を半分も発揮できないまま、一方的に殴られてノックアウトされてしまうでしょう。

あなたは割れたガラス片が飛び散った床の上でも、躊躇いなく三角絞めを狙いに行けますか?

お互いに雨に濡れたグリップの効かない状況下でも、しっかり関節を極め切れますか?

100%の自信でもない限り、やめておくのが無難ではないでしょうか。

 

技がいつも通用するとは限らない

下からの締め技や立った状態からでも極められるアームバーなど、

BJJのテクニックは幅広く柔軟性に富んではいるものの、

全てが目の前にいる相手に通用するという保証はありません。

(これはどのような技術体系についても当てはまることですが)

もしも仕掛けた技が相手に効かなかった場合のリスクは、

顔面などの急所が露出したままになる傾向の強いBJJのほうが他の格闘技に比べて遥かに高く、

場合によっては相手に組み付いたまま一方的に殴られて、よくわからないままノックアウトされるということも十分にあり得ます。

またあまりにも有名な話ですが、

この世には生まれつき体質的に関節が非常に柔軟な人がいます。このような人種には恐らく技がかかりません。

体格差が大きすぎる場合は完璧に極まった状態からでも力任せに外される恐れは十分にあり、

もしもバスターやスラムをまともに食らってしまった場合、落とされるのは固いコンクリートの上です。命はありません。

 

”殴られる恐怖”を克服できない

ジムで柔術(グラップリング)メインの方に打撃スパーをお願いすると、

何とも言えない苦笑いと共にほぼ100%断られます。

そのような方に理由をお伺いして一番多く聞かれるのが、

「顔を殴られるのが怖い」という答えです。

BJJのみならずレスリングや柔道など、互いに組み合った状態から展開することが前提の競技において、

打撃技は言うまでもなく反則です。ゲームを変えてしまう禁じ手に他なりません。

それだけに、BJJをメインにトレーニングを重ねているような人ほど、

打撃に対する耐性が著しく低い傾向にあることは否めません。

わかりきったことですが、柔道もBJJも、まずは相手に組み付くことができなければ話になりません。

相手を捕まえるまでには、当たったら終わってしまうかもしれない打撃をいくつもかいくぐり、

最低でも1回は相手の懐に入らなくてはなりません。

防具を付けたスパーリングならまだしも、ルールのない路上において、その1回を成功させられるチャンスは限りなくゼロに近づくでしょう。

運よく相手の腕や脚を極めることに成功したとしても、顔面は血だらけであちこち擦り傷でボロボロ……これは凡そスマートとは言えません。


制圧(コントロール)には有効な場面も

ここまで散々BJJの悪口ばかり並べてしまいましたが、

状況によっては他の格闘技よりもずっとスマートにその場をおさめることができるかもしれません。

例えば相手が動きの鈍い酔漢などの場合全力で殴られてもダメージはたかが知れています。

むしろこちらが手を出してノックアウトしてしまうと厄介なことになる可能性があるので、

腕などの関節をやさしく極めて交番などに連れていけば、きっとお巡りさんに感謝されることでしょう。

また相手が家族や友人など、直接手を上げることに抵抗がある場面でも有効です。

もしも背後からなるべく苦痛を与えないように綺麗な裸絞め(RNC)をかけることができれば誰も傷つきませんし、

基本のニーオンザベリーやガードポジションを知っているだけで怪我のリスクを大幅に軽減できるでしょう。

上に述べた通り、寝技を中心に展開するリアルファイトはほぼあり得ませんが、

相手をなるべく傷つけずに制圧したり、その場に抑え込む必要のある場面でBJJの右に出るものはありません。

趣味程度にやっているという方も、本気で取り組んでいるという方も、

状況や環境を適切に見極めたうえで、正しく効率的なアプローチができるよう、

普段から”極限状態”を想定したトレーニングの時間も設けられてはいかがでしょうか。

(ノーギや打撃ありのスパーがオススメです)

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。