シナリオ別ソロ・ドリルNo.01【正面からのパンチ】
- 2020.04.14
- 護身術
いつも心に1頭のホワイトタイガーを。どうもサイコ田中です。
世界で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本でもいよいよ”外出自粛”が実質的な”外出禁止”へと移行しつつあります。
気軽に外出できないだけでなく、いわゆる”濃厚接触”を回避しなくてはならない以上、
格闘技や護身術など、完全に一人で学ぶのが難しい分野ではどうしてもトレーニングの質が低下してしまいます。
それでも自宅待機の時間を無駄にしたくないという方のために、
一人で行えるシナリオ別(シチュエーション別)ソロ・ドリルを紹介するシリーズをお送りしたいと思います。
今回はその第1回として、非常にオーソドックスなシナリオである「正面からのパンチ」を想定したドリルを紹介します。
パンチは”真っ直ぐ”飛んでこない?
皆さんは「正面からのパンチ」と聞いて、どのような攻撃を思い浮かべますか?
いわゆるボクシングにおけるストレートのような、軌道が直線的で無駄のない打撃でしょうか。
それとも伝統空手に見られるような、素早い踏み込みを伴った刺すような攻撃のことでしょうか。
駅の構内やそこら辺の路上を主な舞台として想定した場合、そうした教科書的・模範的なパンチは飛んでこないと考えたほうがいいでしょう。
訓練されていない、格闘技経験のない素人が放つパンチの大半は、
・肘が外に大きく開く
・拳を大きく振りかぶる
・大きく回旋または円弧軌道を描く
といった形でフォームが著しく崩れていることが多く、特に典型的なものは、
・上体を前に乗り出す(つんのめる)ようにして
・大きく反動をつけて
・左右の拳を交互に振り回す
というものです。これは特にヘイメイカー(Haymaker punch)などと呼ばれており、
見た目こそワイルドですが合理性に欠けており、人体の構造を考慮すると極めて非効率的な攻撃手段ですが、
何の訓練も受けていない人間が他者を攻撃するときは、単に握った拳を反復的に動かそうとする心理が強く働くため、
このような崩れたフォームのパンチが放たれることになります。
特に女性の場合は腕を上から下に振り下ろすようにする、いわゆる「グルグルパンチ」になる確率が高く、
これも非効率的かつ攻撃力の低い打撃には違いありませんが、凶器を手にしているようなときは警戒が必要です。
まとめると、
「素人のパンチは弧を描いて飛んでくるか、前のめりになって両手を闇雲に振り回す傾向がある」ということです。
これから行うソロ・ドリルでは真っ直ぐのパンチではなく、よくある大振りなパンチをイメージして行ってください。
正面からのパンチを想定したソロ・ドリル
ここからは実際に「正面からのパンチ」を想定したソロ・ドリルを紹介していきますが、
まずはしっかりと全身のウォーミングアップ及びストレッチを行い、
最低でも首・肩・腰は硬さを感じなくなるまで動かしてほぐしましょう。
また十分なスペースを確保したうえで、怪我に注意してゆっくりと行ってください。
ステップ1:頭部のブロック
両腕で頭を抱え込むようにしてブロックの姿勢を作ります。
文字通り「頭を抱える」ポーズのように両手で後頭部を包むようにして、
前腕から肘にかけてのラインで縦長の窓を作るようイメージするとわかりやすいと思います。
また机に突っ伏して眠るときのように両腕を交差させ、おでこの辺りを保護するようにしても構いません。
両方のスタイルを練習するのが理想ですが、自分の感覚にフィットする(わかりやすい)方法で、
何度かブロックの形だけを作る練習をしましょう。
(自然なスタンスからブロック→元の体勢に戻る……という動作を反復するだけで十分です)
ステップ2:攻撃者の懐に入る(タックル)
立て続けに殴られることを防ぐため、ブロックでパンチをしのぎながら、
素早く攻撃者の懐に飛び込みます。
ブロックの形にした両腕を攻撃者の胸元に押し付けるようイメージしながら、
しっかりと顎を引き(足元を見るくらいで丁度いいかもしれません)、
どちらか片方の肩をぶつけるようにして半歩から一歩前に踏み込みます。
ブロックの姿勢のまま身体を開いて正面から相手にぶつかってしまうと、
下からアッパーカットをもらったり、反応のいい相手には膝蹴りを合わせられたりして危険です。
半身を切るようにして上体を斜め前に傾け、肩からタックルするようにして飛び込みましょう。
(ステップ1のブロックと組み合わせ、ブロック→タックルの動作を何度か繰り返してください)
ステップ3:攻撃者に抱き着く(クリンチ)
相手の胸元に無事飛び込むことができたら、そのまま相手の背中に腕を回してしっかりと身体を寄せます。
相手の胸元に顔を押し付けるようにすれば、全力で顔面又は頭部を殴打されるリスクはほぼなくなります。
また相手の肩越しに顔を出す、いわゆるハグの体勢をイメージしても構いません。
(攻撃者と体格差が無いか、攻撃者のほうが背が低い場合はハグのような形が安全と考えられます)
この時、相手の両腕を巻き込むようにして押さえつけながら抱き着くようにすると、
安全に攻撃者の動きを制し、反撃の機会を完全に奪うことが可能です。
相手がいないためイメージするのは困難かもしれませんが、出来ればリアルに攻撃者の姿を思い浮かべ、
腕ごと掴んで離さないようなイメージでクリンチの姿勢へ移行するよう心がけていきましょう。
(ステップ1のブロックからステップ3のクリンチまで、一連の流れを確かめながら何度か繰り返してください)
ステップ4:フィニッシュ
ずっと相手に抱き着いていても埒が明かないため、コンパクトな打撃を入れてフィニッシュします。
相手に抱き着いたままの姿をしっかりイメージしてください。そこから、
・素早く頭を振って頭突き
・金的に膝蹴り×2
・クリンチを解いて顔面に肘打ち
というコンビネーションへと移行します。
組み付いた姿勢で相手の頭がどこにあるかをしっかりと思い描いたうえで、
下から上に頭を振るか、首を傾げて側頭部をぶつけるようにして頭突きを叩き込みます。
(狙うのは相手の頬から口元にかけてのラインか、鼻が理想的です)
その場で足踏みをするような感覚でどちらかの膝を上げると金的に当たるので、そのまま2回膝で金的を叩きます。
(上手くいかない場合は相手の内ももや下腹部に狙いを定めると、必ず一発は股間に命中します)
最後にクリンチの体勢を解除しながら、顔面に肘を打ち込んでフィニッシュです。
肘を上から下に抱えて落とすようにすると大ダメージを与えることができます。
以上、4つのステップをすべて組み合わせた動作を、ゆっくりと繰り返していきましょう。
しっかり相手の姿を思い浮かべることが大切ですが、難しければ最初は動きだけを確かめても構いません。
ゆっくりとブロックから入り、タックル、クリンチ、コンビネーションまでの動作をミスなく再現できるまで反復してください。
何度やっても間違えない自信がついたら、次は背格好の異なる色々な攻撃者の姿を想像しながら取り組んでみましょう。
対応がワンパターン化しないために
日本は治安の良い国なので、普通にしていれば路上のファイトなどは一生に一度経験するかどうかです。
そのたった一度のファイトを生き残りさえすればいいのであれば、対応はワンパターンでも全く問題ありません。
「これだけ知っておけば大丈夫」ということはありませんが、1つのテクニックだけでもきちんと再現できれば、
一定の生存率は確保されるでしょう。
しかし更に高い信頼性と自信を手にしたいのであれば、やはり選択肢の数や対応の柔軟性はある程度要求されます。
人には選択肢が多いと迷って判断が遅れるという特性があるため、闇雲にオプションを増やすのは好ましくありませんが、
対応がワンパターン化した結果追い詰められるというケースは十分に想定されます。
ブロックから攻撃までの流れに変化をつけるなどして、
リアクションがワンパターンにならないよう工夫していくことは大切です。
上で紹介したドリルも慣れてきたら、
・ブロックをヘッドスリップ(頭を動かすディフェンス)に変える
・タックルから素早く頭突き・肘打ちへ移行する
など変化をつけることでワンパターン化を防ぐと同時に、応用力が磨かれます。
自分だけのディフェンス・スタイルを確立し、楽しみながら強くなっていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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