【小ネタ】ツールの「護身用です」はどこまで通用するか【コラム】

【小ネタ】ツールの「護身用です」はどこまで通用するか【コラム】

いつも心に1枚のジュラルミン・シールドを。どうもサイコ田中です。

今月初めに神奈川県で自称無職の男性が超小型の回転式拳銃を、

「護身用として」所持していたとして逮捕されました。

類似の事件は昨今日本国内において頻繁に報道されていますが、

たとえ身を守る目的でも、殺傷力のあるツールの所持が認められることは決してありません。

今回は現代護身術における永遠の課題である、

「護身用です」はどこまで通用するのかについて語りたいと思います。


いわゆる”銃刀法”には曖昧な部分が多い?

日本国内におけるツール類にまつわる典型的な法規は、

銃砲刀剣類所持等取締法——いわゆる銃刀法というものです。

刃物であれば刃渡り何センチ以上はアウトで、何センチまではセーフと定められた法律ですが、

アウトかセーフかは、警察官らがその場で判断を下すため絶対的な基準でない点に注意が必要です。

例えば刃渡り5センチのナイフはセーフのように思えますが、

持っているだけでダメなタイプのナイフ(匕首など)が存在するため一概には言えません。

また刃渡り数センチに満たないペーパーナイフや小型の裁縫道具であったとしても、

持っている人間が明らかに挙動不審であったり、傷害等の前科を持つ場合は話が変わってきます。

もしも警察官に声を掛けられたとして、持っているものが仮に銃刀法・軽犯罪法に抵触しないものだったとしても、

「なんだ、それならOK」とはいきません。

あなたがただのサラリーマンでも、至って真面目な学生だったとしても、

警察官に「これは怪しい」「危険な感じがする」という印象を持たれた場合、

任意同行はもちろん、その場で逮捕されることも覚悟しなくてはなりません。

ただ純粋に身を守るため、法に触れない範囲の道具を持っていたのだとしても、

最後に判断を下すのは警察官と裁判官であり、

彼らは物事の「結果」にしか目を向けないことにも注意が必要です。

(ツールを用いて実際に第三者を傷付けた場合、正当防衛が認められない可能性が高いと考えるべきです)


「護身用です」が認められる範囲とリスク

世の中には様々なツールが存在しますが、

それらの多くは護身用として所持するのに無理があり、

実際に使用することはもちろん所持することすら現実的とは言えません。

「護身用です」が認められる範囲のツールとそうでないツール、

それらが持つリスクについてまとめましたので、

ツールの導入を検討されている方や既に所持されているという方は、

ぜひ一度参考になさってください。

 

「護身用」を謳うものの9割は違法

世間一般に出回っているいわゆる護身用ツールの実に9割以上は、

軽犯罪法というものに抵触する、殺傷力を持つ道具に分類されます。

もちろん通販などで手軽に購入・所持することはできますが、

特別な理由もなしに持ち歩いていた場合は、ほぼ確実に任意同行を求められます。

タクティカルペンのようにぱっと見は普通の文房具でも明らかに別の用途があるものは簡単に見抜かれ、

そうした道具を持ち歩いているという後ろめたさは必ず表情や仕草に現れます。

警察官の目は節穴ではありません。

自分の身を守るはずが、まだ何もしていないのにパトカーに乗せられた、というのでは笑えません。

趣味程度にコレクションするなら話は別ですが、

いわゆる護身用ツールをお守り感覚で持ち歩くことは絶対にやめましょう。

ナイフなど明らかに殺傷力のある道具などは以ての外です。

 

一般的な工具・調理器具にも注意が必要

その目的が護身用にせよ一般的な用途にせよ、

普通の工具や工作機械、調理器具などにも注意が必要です。

例えばネイルガンなどはホームセンターなどで気軽に購入でき、

それほど高価でもないためDIYツールとしての活用も不自然ではありませんが、

厚い木の板を軽々とぶち抜く工作機械が、殺傷力を持たないはずが無いのです。

特に自動車関係のツールは持っていても不自然でない割に殺傷力の高いものが多く、

法的グレーゾーンに位置しているという考え方が妥当でしょう。

同様にして出刃包丁などの調理器具も高い殺傷力を持ちながら、

日用品を扱うスーパーやドラッグストアでも入手できてしまいます。

言うまでもなくこうしたツールも仕事に使うなど正当な理由なく持ち歩いていた場合は完全にアウトであり、

「護身用です」が認められるはずもありません。

(車のトランクにバールやトルクレンチを備えているなど全く不自然でない状況でも、場合によっては処罰を受ける恐れがあります)

 

筆記用具・文房具類は状況によってアウト

普通のペンやハサミも、使いようによっては十分な殺傷力を持ちます。

特に人を攻撃・殺傷すること目的に設計されたタクティカルペンの類は凶器そのものであり、

身を守る目的を逸脱していると言わざるを得ません。

普段の仕事や勉強に使うため筆記具を持ち歩くことは不自然でなく、

ペンやカッターなどを持っていても全く問題はありませんが、

トラブルの現場で即興武器として用いる際には注意が必要です。

相手の眼球や喉など繊細な部位、手首など太い血管の集中している部位を狙って攻撃した場合、

命に関わるダメージを負わせてしまう恐れがあり大変危険です。

身を守る目的と意思があったとしても、相手に致命傷を負わせてしまった場合、

過剰防衛に問われることは避けられません。

たかが筆記用具一つ、たかが文房具一本ですが、

人を殺せるだけのポテンシャルがあることを決して忘れてはいけません。

(日本国内においても一般的なカッターナイフやハサミを凶器とした殺傷事件は決して珍しくありません)


格闘家の素手は凶器に相当する?

よく「格闘家はプロになると一般人を殴れなくなる」といいますが、

だからといって無抵抗では危険ですし、凶器相手には手も足も出ません。

プロの格闘家が一般人を殴ってはいけないなどという法律は存在せず、

通常の暴行罪・傷害罪が成立するという事実に変わりはありません。

(罪が重くなる・正当防衛が認められにくいという点に注意が必要です)

また巷では格闘家の素手は凶器に相当するなどと語られがちですが、

それはごく限られた格闘技の、限られた階級の人種にのみ当てはまることであり、

全ての格闘家・格闘技経験者に当てはまるという解釈は好ましくありません。

プロのファイターでも銃を突き付けられたら為す術がなく、

刃物でめった刺しにされた場合はディフェンスも何もありません。

「格闘技をやっている=強い」とか「格闘技経験がある=喧嘩に強い」というのは致命的な誤解で、

極限状態で身を守ることと、リング上においてルールに従ったファイトで勝利することは全くの別物であることを理解しなくてはなりません。

あなたの目的がリングの上で誰かと闘うことなら格闘技を学び、

自分や自分の大切な人を守りたいなら、正しい自己防衛の術を学ぶ必要があることは言うまでもありません。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。