ベアナックルに見るリアルファイトの現実
- 2019.08.16
- 格闘技
いつも心に一人前のあんかけチャーハンを。どうもサイコ田中です。
突然ですが皆さんは、ベアナックル(Bare Knuckle Boxing)という競技をご存知でしょうか。
ベアナックルは、現在のボクシングの前身とされる競技であり、300年以上の歴史があるイギリスの伝統的武術です。
ルールはボクシングとほぼ同じですが、決定的に違う点として「グローブを装着しない」という特徴があります。
手首を保護するテーピングは許可されますが、拳の周囲を覆うことは認められていません。
完全に素手の殴り合いです。
ベアナックル以外にも、ミャンマーのラウェイ(Lethwei)など、素手で殴りあう格闘技は存在します。
このような過激な競技から、路上における素手の殴り合いの現実が垣間見えると管理人は考えています。
ここではそうした「素手」を前提にした格闘技の競技性と危険性などの観点から、
路上におけるリアルファイトのリスクや注意点を改めて考察していきたいと思います。
仮想リアルファイトとしてのベアナックル
ベアナックルはあくまでも競技です。
ルールがあり、レフェリーがいて、選手はある程度保護されています。
ですが路上の喧嘩となると、当然ルールは無い上に、
試合を仕切る審判もセコンドも、リングドクターもいません。
どちらかがダウンまたは負傷しても殴り合いは続きます。
さらにいえば、ベアナックルはリング上で対峙する選手が最低限ボクシングの基礎を身に付けているので、
フットワークやディフェンス技術など、細かい攻防が見られますが、
素人同士の殴り合いにこうした駆け引きはありません。
このように、ベアナックルを仮想リアルファイトとして扱うには少々無理があることがわかります。
ですが競技の特性上、総合格闘技に次いで路上のシチュエーションに近いことも事実です。
ベアナックルを競技の側面からではなく、その形式という観点から切り取ると、リアルファイトの現実が浮かび上がります。
現実の戦いと競技の境界
繰り返しになりますが、路上のファイトにルールはありません。
ベアナックルはあくまでルールの上に成立する競技であり、喧嘩などとは明確に異なるものです。
しかしベアナックルの試合を見る中で、
もしもルールが無ければどうなるかということも、視点を変えれば自ずから明らかになります。
ベアナックルを競技という視点ではなく、純粋な殴り合い、
すなわち「現実の戦い」と位置づけたときに見えるものは何でしょうか。
試合(闘い)は止まらない
ベアナックルのは試合は一人のレフェリーによって主導されるため、
ダウンや負傷の際は試合が止まります。
倒れた相手に対する攻撃は禁じられていますし、
ラウンド間にはインターバルも設けられており、選手は呼吸を整える時間を与えられます。
ですが現実の殴り合いにおいては審判もダウンの判定も、ラウンドの概念すらありません。
怪我をしようが意識が途切れようが、どちらかが倒れて動かなくなるまで闘いは続きます。
つまり、終わらせたければ倒すしかないのです。
路上のファイトに判定決着などありません。文字通り最後に立っていた者が勝者です。
要するにストリートファイトにおける究極的なゴールとは、
なるべく早く相手を倒し、自分が五体満足でそこに立っていること、ということになりそうです。
絶対に無傷では済まない
大の男が本気で殴りあうわけですから、互いに無事では済みません。
ベアナックルの試合を見ていればわかることですが、マウスピースをしていても試合中に歯が何本も折れたり抜けたりして飛んでいきます。
鼻もかなり酷い折れ方をしますし、額やまぶた、目尻などのカットも相当深くなり、出血の量は想像を絶します。
また拳も保護されていないため、当然ボロボロになります。
試合中に選手同士の拳がぶつかる場面なども見られますが、かなりダメージを受けているようにも見えます。
日本での試合経験もあるチャールズ”クレイジーホース”ベネット(Charles “Krazy Horse” Bennett)選手が試合中に拳を負傷し、
片腕だけで闘うことを強いられるということが起こりましたが、これはベアナックルの特性上致命的というだけで、路上では問題になりません。
事実、ラウェイは蹴りも頭突きも使えるので、
試合中に拳がダメになってしまった選手が肘や膝、頭突きなどの攻撃を多用してその場を乗り切るという場面は珍しくありません。
ただいずれにしても全く保護されない拳や脚、頭が激しく衝突を繰り返すことには違いありませんから、
攻撃者も、攻撃される側もただでは済みません。
闘いが長期化すればまともに動かない箇所も出てくることでしょう。
もしマウスピースも無く、攻撃手段に制限の無い路上で殴りあいになったなら、更に悲惨な状況になることは言うまでもありません。
路上のファイトで短期決戦が重視されるのは、互いに余計な怪我を負わないためでもあるのです。
凶器(武器)を使うことが許される
当たり前ですが、ベアナックルもラウェイも素手の殴り合いを前提にしているのであって、
武器の使用は認められていません。(ですから五体を武器として磨くわけですが)
路上の殴り合いにルールはありませんから、
身近なものを振り回してもいいし、黙ってナイフを抜いても咎められることはありません。
ストリートファイトで最も恐ろしいのは、いきなり凶器攻撃を受ける可能性があることです。
管理人は十代の頃からナイフディフェンスを学んでいますが、
どこにでもいるOL風の女性に「どうもはじめまして」と挨拶されながらいきなりナイフで刺されたら、
あっけなく命を落とすでしょう。それぐらい凶器による不意打ちは危険です。
凶器攻撃以外にも、金的や目潰しなどの反則攻撃や、
単純な数の暴力(リンチ)の恐ろしさも現実のものです。
ベアナックルやラウェイが競技として成立するのは、ルールと主審によって保護されているからに他なりません。
一対多数や武器を持った相手というシチュエーションは、護身の分野です。
ベアナックルなどの競技から学べることは限られているので注意が必要でしょう。
人が人を殴るということ
言うまでもなく人が人を殴るのは非日常的であり、非常事態といえます。
だからこそ格闘技には刺激があり、様々な感情の動きや興奮があるわけですが、あくまでも格闘技は競技でスポーツです。
路上の殴り合いなどは、傍から見れば酷くみっともないことで、かっこいいことでも何でもありません。
闇雲に拳を振り回すのは勝手ですが、自分や他の誰かが傷ついて迷惑を被るという現実からは、決して目を逸らしてはなりません。
それがたとえ自分の身を守るためでも、手を出すのは最後の手段です。
誰かを殴りたいという欲求、願望が抑えられないなら、ジムに行ってスパーリングをしましょう。
そして試合に出場しましょう。暴力は秩序やルールの上でのみ正しく作用するのです。
あなたが犯罪者にならないために、またあなた自身が犯罪に巻き込まれないためにも、
拳を握る際はそのリスクと責任を冷静に見極めましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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