セルフディフェンスと神経科学

セルフディフェンスと神経科学

いつも心に1グラムのエポキシ樹脂を。どうもサイコ田中です。

人間の思考や行動には、セロトニンやアドレナリンといった脳内物質が密接に関係しています。

それはスポーツの試合中などはもちろん、路上におけるファイトのような極限状態においても同じことです。

今回はそうした脳内物質が人体に与える影響について、

現代護身術の考え方に基づいて解説したいと思います。


ストレス耐性が低い=虚弱という勘違い

昨今の研究により、日本人はセロトニンレベルが他の人種や国民に比べて低いことがわかっています。

生まれつきセロトニン受容体のキャパシティはある程度決められており、

これが高い人はストレス耐性が高く、逆に低いと様々なストレスに弱くなると考えられています。

日本人が悲観的であったり、うつ病になりやすいことと関係があるのかないのかはまだはっきりしていませんが、

この研究結果が意味することは、日本人の多くが緊張しやすくリラックスするのが困難であるということです。

一般に「ストレス耐性が低い」と聞くとメンタルが不安定で虚弱な印象を受けますが、

実際はその真逆です。

ストレス耐性が低くリラックスるのが困難ということは、言い換えるならば、

「簡単に安心しない」「気を抜かない」ということになります。

これは防犯・護身の観点で非常に重要なファクタに相違ありません。

セロトニンレベルが高くいつもリラックスしているような人は、いざという時弛緩した状態から緊張状態に切り替えるのが困難であり、

結果的に反応が一歩も二歩も遅れることになります。

これに対しセロトニンレベルが低く、常に一定の緊張感を保って生きているような人物は、

不測の事態が起きてもストレスという刺激に素早く反応でき、反応や行動に遅れが生じません。

ストレス耐性が低いと、確かに精神的には打たれ弱く、些細なことで自信を失ってしまうかもしれませんが、

それ自体が人間的な弱さや生存能力の低下へと直結するわけではありません。

むしろ生まれつき弱く繊細であるからこそ、強さを求めて貪欲になれるのです。

そして弱さを認められるということは、それ自体が一つの強さでもあるはずです。


あなたを強くする3つの脳内物質

脳内物質には様々な種類がありますが、ここでは主に極限状態で力を発揮するものを3つ紹介します。

それぞれの脳内物質には分泌に関連するトリガー(スイッチ)が存在します。

自分に合ったトリガーの探し方といざという時に開放するためのテクニックも併せて記載しています。

様々な場面で役立つ脳内物質を自在に操り、「強くなる」という感覚を身につけましょう。

 

アドレナリン

ファイトに関係する脳内物質として真っ先に思い浮かぶという方も多いのではないでしょうか。

アドレナリンは、緊張・興奮を司る脳内物質であり、分泌時には心拍数増加・血糖値上昇といった反応が見られます。

瞬間的にストレスが高まった状況において力を発揮する脳内物質であり、

自分自身を保護するために生じるごく自然な反応とも言えます。

身体を闘争または逃走に向けて最適化し、痛みを感じにくくさせるなどの副次的な効果を持つことも大きな特徴です。

アドレナリンの分泌をコントロールする上で大切なことは、緊張しすぎて萎縮してしまわないことです。

恐怖などから生じる緊張が萎縮に繋がると、ノルアドレナリンという別の脳内物質が分泌されストレスが強化されます。

ノルアドレナリンの過剰分泌はパニック状態を引き起こすリスクがあるため、アドレナリンとノルアドレナリンの境界点を探ること、

その両者の強みを知り武器にする考え方が大切です。

アドレナリンは、ウエイトトレーニングにおいて高重量を扱ったり、短い距離を全力疾走するなどした際に分泌するとされています。

他にも危険と隣り合わせの作業や自動車の運転中など、主に強い緊張と不安を伴う場面で多く分泌されます。

強いストレスを感じたときや身の危険を感じたときには、戸惑ったり萎縮したりするのではなく、

身を守るためにアドレナリンが出ていることを意識し、そこから生じる興奮や高揚といった感覚をしっかりと記憶することが重要です。

 

ノルアドレナリン

アドレナリンの対極にあるもう一つの抗ストレス性脳内物質です。

アドレナリンが心拍数の上昇や体温上昇など身体的な機能に大きく影響するのに対し、

ノルアドレナリンは精神面、内面の変化に直結します。

アドレナリンと同様に闘争または逃走に向けて心身を最適化する効果を持つノルアドレナリンですが、

精神面に強く働きかけ、集中力や思考速度を大幅に向上させるという特性を持ちます。

このためリアルファイトなどの極限状態では瞬間的な反応速度や対応能力を大幅に引き上げ、

攻撃の積極性を高めるといった効果が期待できます。

ただしアドレナリンと同様に分泌させすぎた場合はパニックや暴走に繋がるため制御するための工夫は必要です。

激しい運動などで心拍数が上昇した状態を作り、そこから徐々に呼吸を整えていくといった訓練方法が理想的と考えられます。

アドレナリンとノルアドレナリンはその性質がとてもよく似ているため区別するのが困難ですが、

どちらもセルフディフェンスにおいてはメリットしかない重要な脳内物質には変わりないため、

「今どちらが分泌しているか」までは意識する必要はないでしょう。

 

β-エンドルフィン

エンドルフィンとも呼ばれます。

アドレナリンとは少し違い、幸福や快感といったポジティブな感情の動きを司る脳内物質です。

食事や性交渉など癒しや心地よさを感じたときに分泌される一方で、

命に関わるような極限状態でも多く分泌されることが知られており、

・苦痛や恐怖を和らげる

・注意力、集中力を強化する

・免疫力を向上させる

など身を守る上で必要不可欠な役割を果たします。

アドレナリンと非常によく似た特性を持つエンドルフィンですが、分泌する条件は多岐にわたり、

おいしいご飯を食べるだけで出る人もいれば、大声で歌うことで多く分泌するなどトリガーは人それぞれです。

ドーパミンやセロトニンなどのように快感や癒しに関わる脳内麻薬の一種とされているため制御は必須ですが、

ストレスを軽減し生きる活力をもたらす大切な脳内物質には違いないので、積極的に多く分泌する条件を探すといいでしょう。


エナジードリンクで脳内物質をブーストする

少々乱暴なアプローチにはなりますが、

カフェインを多く含んだ飲料で脳内物質の分泌を強制的に促すというテクニックもあります。

カフェインにはストレスホルモンの一種であるコルチゾールの分泌を増加させ、血管を拡張させる効果があります。

これにより半ば強制的に興奮・緊張状態を作り、脳内物質の分泌量を増加させ、仮想「闘争状態」を作り出すことが可能です。

特に糖分を多く含んだエナジードリンクの効果は強力で、瞬間的に心身を戦闘モードに切り替え、

勉強や仕事、運動でのパフォーマンスを大幅に向上させることができます。

もちろん副作用はあるため乱用には注意が必要ですが、

脳内物質が出ている感覚がイマイチ掴めないとか、体質的になかなか興奮状態に入りにくいという方にはオススメです。

ワークアウトの前に飲むか、緊張状態を強いられる場面で適量口にするといいでしょう。

メーカーや製品のバリエーションも豊富ですので、ぜひ自分の口に合うものを探してみてください。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。