セルフディフェンスとスポーツビジョン

セルフディフェンスとスポーツビジョン

いつも心に大さじ1杯の白味噌を。どうもサイコ田中です。

突然ですが皆さんは、スポーツビジョンという言葉をご存じでしょうか。

いわゆる動体視力や瞬間視・周辺視など、スポーツのパフォーマンスと関係する視覚機能の総称であり、

競技力を左右する重要なファクタとして注目されています。

今回はそんなスポーツビジョンを自己防衛(セルフディフェンス)に活用するためのアイデアとトレーニング方法についてお話ししたいと思います。


情報の8割近くは「目から」得られる

人間には様々な知覚器官がありますが、そのほとんどは犬や猫などに比べ感度が鈍く、

情報収集には適さないとされています。

その中でも人間が信頼性の高い情報を集めることのできる器官の一つが、眼球(視覚)です。

匂いや音、気配などが十分に感じ取れなかったとしても、

・火や煙が出ている

・何かが光っている

・誰かがこちらに向かってくる

などといった情報は、目から確実に獲得することができます。

特にトラブルの現場など緊迫した場面では対象との距離が接近している傾向にあり、

目から得られる情報量とその価値は他の感覚器から得られるものとは比較になりません。

普段から色々な場所や人を見る、たくさん目を動かすといったことを心がけ、

視覚から得られる情報量を増やす工夫を重ねていくことにより、危機管理能力は間違いなく向上していきます。


護身に関連するスポーツビジョンとその鍛え方

ここからは身を守ることに関連するスポーツビジョンについて、

私自身が実際に取り組んでいるトレーニング方法と共に解説していきたいと思います。

 

瞬間視

身を守る上で大切なことは、なるべく短い時間に多くの情報を集めることです。

目から得られる情報量の比重が大きいことは既に述べた通りですが、

情報を収集するのに時間がかかっていては「逃げる」または「抵抗する」機会を逸してしまいます。

路上で予期せぬ対人トラブルに巻き込まれたとき、

・相手の凡その年齢と体格

・服装と所持品の特徴

・ナイフなど凶器の所持

・周囲に仲間がいるか

などといった情報は体感的に”一瞬”ほどの短い時間で集められなければなりません。

あなたがぼんやり相手の様子を窺っているうちにどんどん相手との距離は縮まります。

凶器を持っている場合は、その存在を見抜けなければあっけなく命を奪われる恐れさえあるのです。

もしもトラブルになった相手に明確な悪意や脅威を感じたときには最低でも、

・両手が見えているか

・上着やズボンのポケットが膨らんでいないか

・格闘技経験者の身体的特徴(餃子耳・拳ダコ)が見られるか

ぐらいは瞬時に確認できるようにしておきたいものです。

 

瞬間視を鍛えるうえで私がオススメしたいのは、フラッシュ暗算です。

一瞬だけ表示される数式の答えを導き出し、その解を足すまたはかけるといった方式が一般的ですが、

フラッシュ暗算の魅力は何といっても瞬間視のみならず脳のトレーニングにも繋がっているところです。

ただ漫然と一瞬だけ表示される文字や数字を見て答えを当てるというトレーニングも効果が薄いわけではありませんが、

完全に反応速度と視力のみに依存するため、セルフディフェンスのような思考と反応の両面が重視される分野にはそれほど適しません。

見てから考える、見ながら考えるといったトレーニングは全体的な反応速度と対応の正確さを高めるうえで非常に重要です。

現在ではスマートフォン向けのアプリなども多数存在するため、そのようなものを活用しながらゲーム感覚で鍛えていくのが効果的でしょう。

 

周辺視

瞬間視に次いで非常に重要なスポーツビジョンが周辺視です。

セルフディフェンスにおいて「視野の広さ=選択肢の多さ」と言い換えることも出来、

見えているもの、得られている情報量が多ければ多いほど、対応は柔軟かつ最適化されます。

よって「見たい」「見よう」と思った対象物にのみ焦点を合わせるのではなく、

広い視野で全体を観察し、捉えることのできる情報を限界まで拡張する必要があります。

周辺視を鍛えることで注視しているもの以外の動きや特徴を観察でき、

初動の遅れやトラブルのエスカレートを未然に防ぐことが可能となります。

 

周辺視を鍛えるオススメのトレーニングは、速読です。

よくある本をバラバラとものすごい勢いでめくっていって、内容が頭に入っているというアレですが、

セルフディフェンスに関連付けるためにやってもらいたいのが、

ファッション雑誌の速読なのです。

「雑誌で速読とか馬鹿じゃねえの」と言われても仕方がないかもしれませんが、

私はこのトレーニングをセキュリティとして勤務していた時代からずっと継続しています。

ファッション雑誌は別に何でも構いません。男性向けでも女性向けでも、特に縛りや条件はありません。

意識してもらいたいことは、

・モデルの髪の長さや服の色など条件を決める

・手の周辺を特に意識する(手ぶらか、そうでないか)

・なるべく全速力でページをめくる

という3点です。

まず、モデルの容姿の条件を決める目的は「ターゲットの設定」です。

あなたを狙う攻撃者の外見的特徴をイメージし、その特徴に該当する対象が何人見つかったか数えておき、

最後にゆっくり答え合わせをしてください。これにより自分が「どの程度見えているか」がわかります。

また手の周辺に気を付けることで、武装の有無を見分ける訓練になります。

攻撃者の多くは手に凶器を持っているか、カバンやポケットの中に隠していることが大半です。

もしもポケットに手を突っ込んでいたりカバンで手を隠しているようなときには、それを見逃すことは致命的なミスになります。

写真のモデルが丸腰(手ぶら)であるかそうでないかを瞬間的に見極めるように努め、

慣れてきたら「このページとこのページに何か持ってる人がいた」と振り返れるようになりましょう。

最後にページを全力でめくる意味は、集中力を無駄遣いしないためです。

ゆっくりダラダラ行い、「ミスしても次がある」と思うといい加減になり効率が下がります。

雑誌を使った速読トレーニングを行う際は、「答え合わせも含めて中を見るのは2回まで」などとルールを明確に設定したうえで、

「絶対見えない」と思うほどのスピードでめくることを心がけましょう。

これだけで集中力と反応速度が飛躍的に向上します。

(速読は周辺視のみならず瞬間視のトレーニングにもなるためオススメです。もちろん読むのは普通の実用書などでも結構です)

 

眼球運動

動いている対象に対して眼球を追従させる能力です。

掴みかかってくる手やパンチ・蹴りなどを目で追う、凶器攻撃の軌道を見極めるなど、

主に直接的ディフェンス面に深く関連し、生まれ持った運動神経や動体視力にある程度依存します。

静止視力とも関連するためあまりに視力が悪い場合は向上させるのが困難になるかもしれませんが、

継続的にトレーニングを行うことで改善できる余地はあると考えられます。

 

眼球運動のトレーニングとしてオススメなのが、自分の親指を追いかけるビジョン・トレーニングです。

非常にオーソドックスなメソッドで、やり方はいたって簡単、

片手または両手の親指をあちこち色々な方向に動かし、それを両目で追いかけるだけです。

指を動かす速さはゆっくりで構いません。

上下左右、斜めなど様々な方向に動く指先に意識を集中し、しっかり眼球を追従させることがポイントです。

疲れ目の解消にもなるので、休憩時間に1回3分ほど、1日2回から3回を目安に取り組んでいきましょう。

 

眼と手との協調性

眼球と手先の連動は格闘技は勿論、様々なスポーツにおいて非常に重要なスポーツビジョンです。

特に対象のみならず自分自身も動いているような場面や、

動いているもの(相手の頭や腕など)に合わせて的確に攻撃・防御しなければならない護身の分野では必要不可欠とも言えます。

この能力が欠如している場合は、どれだけ強いパンチが打てても、またどれだけ卓越したディフェンス技術を持っていたとしても、

本来の力を十分に発揮できない可能性が高くなると考えられます。

 

眼と手の連動性を高めるうえで効果的なトレーニングとして私が取り組んでいるのは、

テニスボールを使ったシャドーボクシングです。

特に難しいことはありません。左右どちらかの手にテニスボールを持ち、

一度バウンドさせている間に好きなコンビネーションを一回挟み、

「最後にパンチを打ったほうの手」で掴む。これだけです。

例えば基本のワン・ツーの場合であれば、最後はストレートなので右手でボールを掴みます。(サウスポーの場合は左)

顔の高さにまでしっかりボールをバウンドさせる必要がありますが、

もしもボールの高さが低くなったときはボディを打ったほうの手でキャッチするなどして変化をつけることも出来ます。

うまくいかなくても、しっかりボールを掴もうとする意識を持つだけで眼と手の動きが少しずつシンクロしていきます。

ミット打ち(パッドワーク)でも同様の効果が得られますが、トレーニングパートナーが見つからない時にはこのようなトレーニング方法もあります。

自宅でコソコソ鍛えておられるという方は、ぜひ参考になさってください。


瞬間視・周辺視はどこでも鍛えられる

現代人はパソコンにスマートフォン、ゲーム機など目に負担をかける端末に強く依存した生活を送っています。

かくいう私もスマホゲームや動画を観たりして、いつの間にか目がしょぼしょぼしていることも珍しくありません。

視野を広げ、観察力や周辺視・瞬間視を鍛えるためにも、

どんどん顔を上げて遠くを見るようにしていきましょう。

雑誌を使った速読を紹介しましたが、普通に通りを歩いている人や駅で向かいのホームにいる人を見て行ってもいいのです。

変なことをしていると思われるかもしれませんが、

一瞬だけ人や物を見てその特徴をなるべく多く、そして正確に説明するというのは効果的なトレーニングです。

スマホから顔を上げた瞬間にすばやく目を閉じ、その時点で見えたものを思い浮かべましょう。

学生は何人いましたか?

傘を持った人は?

電光掲示板にはどんな文字列が並んでいましたか?

頭の中で情報を整理出来たら、目を開けて答え合わせをしてみましょう。

これを1日何回か繰り返すだけで、瞬間視・周辺視は飛躍的に向上してきます。

眼から得られる情報量をどんどん増やして、危機管理能力を更に高めていきましょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。