【コラム】映画で学ぶ護身術:第2回『Mr.ノーバディ』【新シリーズ】

【コラム】映画で学ぶ護身術:第2回『Mr.ノーバディ』【新シリーズ】

いつも心に1本のモーフィング・カランビットを。どうもサイコ田中です。

今回はシリーズ「映画で学ぶ護身術」の第2弾として、

2021年公開のアクション映画『Mr.ノーバディ』を紹介したいと思います。


『Mr.ノーバディ』のあらすじと見どころ

今回紹介する『Mr.ノーバディ』(原題:Nobody)は、

2021年に公開されたボブ・オデンカーク主演のアクション映画であり、そのキャッチコピーは、

火曜日、ゴミ当番
愛車は路線バス
地味な男が
派手に、キレる。

という風になかなか過激ですが、内容は至って健康的(?)というか、

良くも悪くも王道的なアクションタイトルのプロットに沿った展開となっています。

 

主人公のハッチ・マンセルは妻子を持つ至って普通の会計士であり、

これと言って取り柄のない「何者でもない男」(主題)でしたが、

自宅に強盗が押し入るという事件きっかけに、物語が動き始めます。

 

何といってもこの作品の見どころは、

どこにでもいるぱっとしない中年男性が、

実はマフィアを単独で壊滅させるほどの実力を持つ戦闘マシーンだったという筋書きと、

その本性が露わになる過程で生じる強烈なカタルシスに他なりません。

 

鬱屈した日々、平穏無事だが退屈な生活——そういったものに疑問や葛藤を抱く社会人にとって、

これほど痛快なエンターテイメントは無いでしょう。

護身術を学ぶとかそんなことに関係なく、一度頭を空っぽにして最後まで観てほしい作品です。


『Mr.ノーバディ』から学ぶ実戦的護身スキル3選

ここからは映画『Mr.ノーバディ』から学べる実戦的なセルフディフェンススキルを、

誰でも実践できるマインドセットなども併せて3つの項目に分けて紹介します。

身を守ることに興味をお持ちの方は、当該のタイトルをご視聴の上でぜひ一度参考になさってください。

(ここで紹介する内容は映画を見ていない方でも実践できる内容となっています)

 

手に持っているものは何でも武器にする

この手のテーマでは繰り返しお伝えしていることですが、

身を守る上で、「その場にあるものを武器にする」という意識は不可欠なものです。

 

特に『Mr.ノーバディ』の作中描写では、特にバス車内での戦闘シーンにおいて、

・腕時計を拳に巻いて握り込む

・カバンで殴打する

・ひも状のもので相手の首を締め上げる

など、クリエイティブかつアグレッシブでありながら、

誰でもその気になれば実践できるテクニックが見受けられます。

 

また上記のテクニック以外にも、自宅が特殊部隊員による襲撃を受けるシーンにおいては、

・野球用バットでシンプルに殴打

・キッチンの包丁で切りつけるor刺す

・鍋の中の熱湯をかけてそのまま鍋で殴打

など、なかなか豪快かつ強烈なアプローチも確認できます。

 

こうした攻撃テクニックはそれらを「知っているだけ」で十分に機能します。

キーになるのは「武器になるものを探す意識」と「手段を択ばない覚悟の強さ」です。

どのような局面でも決して諦めることなく、

相手を圧倒するイメージを持ってアグレッシブに攻めの姿勢で向かっていく事が大切です。

 

「覚悟しろ」という強気の姿勢をアピールする

自信が無い、弱気な状態では攻撃者の思う壺です

どんな不利な局面でも「お前らは怖くない」「やってやる」という気持ちを前に出すこと、

半ば狂気に近い攻撃性を前面に押し出していく意識は、

相手にプレッシャーを与えることに繋がり、それが主導権を握るための第一歩となります。

 

『Mr.ノーバディ』の作中では、特にバスでの戦闘シーンにおいて、

一度バスから飛び出した(飛び降りた?)主人公が、血だらけになりながらも立ち上がり、

再度ガラの悪い連中が待つバスの車内へと戻っていく場面がわかりやすい例と考えられます。

本来ならそのまま立ち去ってもいいのに、女性を逃がして再度ごろつきと対峙し、

「俺は本気だ」「最後までやってやる」という表情・仕草を見せることで、

人数的に圧倒的不利な状況で完全に主導権を握っています。

 

またマフィアのボスとの対談の場面においても、

絶対に勝ち目のない状況でも冷静に目力と佇まいで相手を圧倒し、

無傷でその場を立ち去っています。

 

相手の人数が多かったり、明らかにヤバそうな雰囲気になると恐怖を感じ、

萎縮してしまいそうになるものですが、

そういう場面こそ冷静かつ大胆に――とにかく堂々と振る舞うことが大切です。

相手にナメられるのが良くないのでは無く、

「覚悟が出来ている」ことをきちんと視線や態度で示すことが重要なのです。

ファイティングポーズを取って「かかってこい」という態度を見せるのではなく、

「俺は今日死んでもいいけど、お前らはどうだ?」という表情で、

「どうかしたんですか?」と尋ねるくらいが丁度いいのです。

(そしてそういうマインドセットを作るためにも、メンタルを鍛えプレッシャー耐性をつけていくことが肝要です)

 

”匂わせ”で闘わずにファイトを終わらせる

最近SNSなどで流行り(?)の言葉に”匂わせ”というのがありますが、

路上のファイトにおいても、

「只者ではない」「自分たちが狩られるかもしれない」と相手に感じさせるような、

”匂わせ”の立ち振る舞いが強力な武器になってきます。

 

『Mr.ノーバディ』の作中においては、

主人公がマフィアの情報を集めるため裏稼業の人間たちが屯するアジトに単身乗り込むシーンにおいて、

ファイトになりそうな雰囲気を、一瞬にして鎮めるという描写に見られます。

結論から言うと主人公の手首に入ったタトゥーを見た退役軍人がその正体を察し、

自ら争いを回避した――という描写ですが、

同様にして相手にそれとなく情報を与え、

闘わずしてファイトを終結させるというアプローチも決して非現実的とは言えません。

 

例えば管理人個人の体験としては、

・拳ダコに気が付いたトラブルの相手が突然「失礼しました」

・VENUMのバッグを目にしたDQNが慌てて立ち去る

・後から合流してきた黒人の友人を見て一気に萎縮する老害

といった場面には幾度となく遭遇してきました。

相手にどれだけの情報を与えるか、あるいは相手がどれだけ情報を処理できるかにもよりますが、

基本的に「勝ち目が無い」と悟った時点でどんなにヒートしている相手もあっさりと身を引きます。

(非常に馬鹿馬鹿しい話ですが、人間は結局その程度のちっぽけな動物に過ぎません)

 

本当に相手を圧倒できなければ何の意味もありませんが、

「見掛け倒し」でもいいのでとにかく身体を大きくしておくとか、

「何かやっている」オーラをまとっておくことは決して無駄にはなりません。

(若い方には特にハードな筋トレと首回りを太くするワークアウトをオススメします)

またよく見ないとわからない場所にタトゥーシールを貼っておくとか、

彫り物が入っているように見えるアームカバーなども意外と効果的です。

 

そもそもファイトに発展しないこと――互いが無傷で帰宅できるということが、

現代護身術の最高の到達点であるということに変わりはありません。

可能な限りトラブルや争いを回避し、手を出すのは最後の手段という意識を大切にしていきましょう。


この世の誰もが”Nobody”の時代に……

さて、今回紹介した映画『Mr.ノーバディ』の主人公は、

一見すると冴えない会計士の男性が、実は元プロの●●●で――という、

創作物では非常によくある典型的「能ある鷹は爪を隠す」タイプでしたが、

こうした人物は、実はそこらへんを普通に歩いているかもしれないのです。

 

少々不謹慎な話になるためあえて婉曲な言い回しをしますが、

今の世の中、

・自宅で火薬を乾かしている

・山で自作銃の試し撃ちをしている

・特定の人物を傷付けるために周到に準備をしている

といった危険な人物どこに潜んでいるか全くわかりません。

それはあなたが毎朝電車で同じ車両に乗り合わせる冴えないサラリーマンかもしれません。

職場にいる何だかぱっとしない派遣社員の男性かもしれません。

ときどきアパートの駐車場ですれ違うちょっと魅力的な女性かもしれません。

誰にも相手の正体はわからない――究極的に言えば、この世の全ての人が、

今回紹介した『Mr.ノーバディ』の主人公のようなモンスターかもしれないのです。

 

決して「自分だけは大丈夫」などと根拠のない自信は持たず、

関わる全ての人物を冷静に観察し、一定の距離を保ち、

自分が危害を加えられる可能性というものを考慮した立ち回りを意識していくことが大切です。

それが例えあなたの友人や恋人……家族だったとしてもです。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。