ツールディフェンス基礎【ツールの選択と基本的な扱い方】
- 2020.04.21
- 護身術
いつも心に一冊の胡散臭い実用書を。どうもサイコ田中です。
セルフディフェンスの基本は徒手格闘(素手での対応)になる思われますが、
状況によってはやはり何らかのツールで武装できるほうが生存率が高まることも事実です。
(特に女性やお年寄りなどフィジカル面でハンデがある場合、徒手格闘は適切とは言えません)
今回はそうしたツールディフェンスの基礎として、
自分に合ったツールの選択と基本的な扱い方について解説したいと思います。
素手で闘うのは出来れば避けたいが……
どのようなシチュエーションでも、基本的に素手でのリアルファイトは回避したいところです。
素手での対応には、
・拳や手首の負傷
・殺傷力(攻撃力)の不足
・血液感染などのリスク
という問題点があることは勿論、シンプルにフィジカル(体力)に依存する部分が大きすぎ、
非力な女性や高齢者、学生が身を守るにはあまりにハードルが高すぎるというのが現実です。
しかしその一方で、ツールや凶器による自己防衛も大きな問題点を抱えています。
まずどのようなツールも身を守るためある程度の殺傷力(攻撃力)を持っていますが、
使い方によっては不必要に相手を傷付け過剰防衛に問われたり、
最悪の場合相手の命を奪う結果につながる恐れさえあるため注意が必要です。
また一部の護身用ツールは持っているだけ(持ち歩いているだけ)で軽犯罪法に抵触し、
もしも職務質問を受けた場合は面倒なことになる可能が高く、気軽に購入・所持することもオススメは出来ません。
身を守るためにある程度の武装(武力)が必要なことも事実ですが、
出来ればボールペンやハサミなどのようにどこにでもあるような、
あるいは持っていても全く不自然でないようなものを武器にするのが理想的には違いありません。
最適なツールの選び方と基本の握り方・扱い方
ここからは体格や運動の経験など様々な観点から見た護身に適したツールの選び方と、
握り方など基本的な扱い方について解説します。
これからツールの導入を検討されている方や、
既に持っているが使い方がイマイチわからないという方はぜひ参考になさってください。
当ブログでは何度も繰り返しお伝えしていることですが、
ここで紹介する知識やテクニックは身を守る目的にのみ用い、
絶対に悪用しないようにしてください。
また護身用ツールの導入と所持は完全に自己責任でお願いいたします。
自分に合ったツールの選び方
年齢や体格・運動の習慣などによって変わってきますが、基本的にツールを導入する際の注意点は、
・銃刀法に抵触しない(普通は最初からクリアしています)
・携行していても不自然でない
・すぐに取り出して安全に使える
の3点です。詳しく見ていきましょう。
まず「銃刀法に抵触しない」というルールですが、
これはシンプルに所持・携行が出来ないため手に入れられない・持っていると捕まるため意味が無いという理由からであり、
一般的な市販のツールは最初からこのラインをクリアしているため気にする必要はあまりありません。
次に「携行していても不自然でない」という点ですが、こちらは職務質問を受けたりして手荷物を調べられたとき、
あなたが正当な理由を説明できれば問題ない、という意味合いになります。
逆に対象のツールについてあなたがそれを持っている理由をきちんと警察官に説明できないとか、
所持することが認められる資格などを示せない時には、非常に面倒なことになると思っておいてください。
(所持しているだけで逮捕された事例もあるため、いかなるツールも決して軽い気持ちで持ち歩いてはいけません)
最後に「すぐに取り出して安全に使える」という項目ですが、この部分が最も重要です。
持っていてもどこにあるか忘れたり、すぐに取り出して構えられないようでは全く意味がありません。
また正しく安全に使えなければ自分自身が怪我をしたり、攻撃者を過剰に傷つける恐れがあるため好ましくありません。
(攻撃者に奪われて逆効果になるという可能性も考慮する必要があります)
どのようなツールも必ず正しい使い方の指導を受けたうえで、自身がそれを持ち歩き、いざという時使えるか、
使うべきなのか(使ってもいいのか)を十分に考慮し、自己責任で導入しましょう。
護身用ツールを自己防衛ではなく、誰かを傷付けたり脅したりするために購入・所持するのはそれ自体が既に犯罪です。
(他者を傷付ける恐れのある道具を「護身用」と称して持ち歩くのも言うまでもなく犯罪です。注意しましょう)
ツールの種類と適性
ツールには様々な種類がありますが、基本的には以下の3つに大別されます。
・近接格闘武器(警棒・タクティカルペンなど)
・非接触系装備(スタンガン・催涙スプレーなど)
・遠距離制圧用装備(さすまたなど)
警棒やタクティカルペンなどの近接格闘武器は、安全に扱うためにある程度のフィジカル(体力)を必要とします。
握ったツールを落とさない腕力(握力)は勿論のこと、振り回しても流されない体幹・下半身の強さなど、
基本的な運動に関連する筋力が鍛えられていることが前提であり、攻撃者との距離感を正しく見極めるため、
格闘技等の経験も求められます。
スタンガンや催涙スプレーと言った非接触型の中近距離用ツールは全くフィジカルに依存しない代わりに、
マニュアル等で正しい使い方を把握し、専門的な知識を持った指導者から最低限の教習を受ける必要があります。
さすまたのような遠距離制圧に特化した武装は主に警察官や本職のセキュリティ、学校教員などが用いるものであり、
一般人が護身のために持ち歩くようなものではないため、ここでは扱わないものとします。
その特性から、近接格闘武器は主に体力のある若い男性から格闘技経験のある中高年の方に適していると考えられ、
導入そのものは容易でも、実際に運用するのは多少ハードルが高いという印象があります。
一方、スタンガンのような非接触型の武装は即効性が高くフィジカルに依存しないため取り回しが比較的容易な反面、
その効果(殺傷力)から所持・携行が難しく、実際に使う際には法的な側面での問題点が生じるため注意が必要です。
次にそれぞれの基本的な取り扱いについて説明します。
近接格闘武器の基礎
近接武器には重さ・大きさなど様々なものが存在しますが、どれも使い方のコンセプトは変わりません。
それは「強く握って全力で殴打する」ということです。
特に警棒のようなものは振り回すだけで強い抑止力(威嚇)になるため効果があり、
実際に当てる必要すらないため互いに無傷でその場から立ち去れる可能性が高く、安全と考えられます。
また一見武器かどうか区別のつきにくいタクティカルペンやクボタンは手の中に隠し持つことに特化しており、
攻撃者に不意打ちの一撃を加えて速やかにその場から立ち去るというのが主な使い方として想定されます。
以下、基本的な握りと攻撃方法について簡潔に説明します。
ニュートラル・グリップ
刃物の場合は親指が刃先のほうを向くように握る握り方です。
最もオーソドックスな握り方であり、長所と短所がはっきりしていることが特徴です。
突く(刺す)・振る(切る)・受ける(防ぐ)という3つの基本動作全てに対応し、
直感的に腕を振るだけで抑止力になることが大きな強みと言えます。
一方で、握力が不十分な場合は側面や上からの衝撃や打撃などにより手からすっぽ抜けてしまう確率が高く、
武装解除されないために慎重な扱いが求められるという弱点があります。
リバース・グリップ
アイスピック・グリップ(Ice-pick grip)とも。
刃先が小指側に来るように握る持ち方であり、応用力の高い非常に高度な握り方と言えます。
ニュートラル・グリップ同様に突く・振る・受けるの全てをスムーズに行えるだけでなく、
親指でグリップの末端をしっかりとホールドできるため安定性が高く、手からすり抜けにくいという強みがあります。
またタクティカルペンのようなものであれば直感的に上から振り下ろすだけで十分なダメージを与えられるため扱いが容易であり、
空いているほうの手(Empty-hand)で殴打する・攻撃をブロックするといった対応も増えて戦略面での幅が広がります。
もしも攻撃者が凶器をこのように握っている場合は最大限の警戒が必要と言えるでしょう。
(今日までの私個人の経験上、何らかの訓練を受けている人間が好む握り方という印象があります)
非接触系装備の基礎
スタンガン・催涙スプレーといった非接触型のツールを所持する際は必ず製品のマニュアルを熟読の上、
販売者または専門家から正しい使い方の指導を受ける必要があります。
使い方を間違えた場合は過剰防衛案件に繋がることは勿論、自身が受ける被害が拡大する恐れがあり大変危険です。
どのようなツールも使うタイミングや相手をしっかりと見極め、
攻撃者を「襲う・倒す」ことが目的にならないように注意が必要です。
(言うまでもなくツールを自己防衛以外の目的で用いることは犯罪です)
ここではスタンガン・催涙スプレーの使い方について簡単に解説しておきます。
スタンガン
攻撃者に押し付けるようにして使うことが前提であるため、
・取り出すタイミング
・放電(攻撃)するタイミング
が非常に重要です。
首筋や脇腹を狙って放電するのが一般的な使い方ですが、
相手の動きを止めるだけなら腕や脚、手の指先だけでも十分な効果が期待できます。
最大出力で胸などの急所に当てさえしなければ命を奪うほどのダメージにはならないためその点の心配は不要と思われますが、
物騒なアイテムには違いないため気軽に持ち歩くべきではないでしょう。
(自分が感電する”自爆”には十分注意が必要です)
催涙スプレー
一般的な製品は攻撃者との距離を1メートルから3メートル程度に設定しており、
この範囲で最大の効果を発揮すると考えておけば問題ないと考えられます。
しっかり顔面に内用液を噴射することが理想的ですが、少しの量でも吸い込むと大ダメージになり、
・一定時間目が開かない
・唾液や鼻水、涙が止まらない
・軽度の呼吸困難
などの状態に陥ります。
内用液は前方にしか噴射されませんが、場合によってはある程度四方に拡散し、
防衛者(スプレーを使った人間)がダメージを受けたり、全く関係の無い第三者が何らかの影響を受ける恐れがあるため注意が必要です。
また内用液が特殊な染色素材を含んでいたり、強い臭いを発するようなものであった場合は、
使用した場所(駅や飲食店の店内など)によっては何らかの法的手続きが求められたり、現場に駆け付けた警察官に注意を受ける可能性もあります。
手軽に使えることを売りにした製品が目立ちますが、そのほとんどが上記のようなリスクや”自爆”のダメージを一切考慮していないため、
安易に導入することは避けるべきでしょう。
ツールの携帯・使用は完全に自己責任で
当ブログでは何度も繰り返しお伝えしていることですが、
自己防衛(護身)を目的としたツールの導入と所持・携帯は完全に個人の自己責任に委ねられています。
簡単に言えば、「持つのは自由だけど、どうなっても知らないよ」ということです。
身を守るためとはいえ、どのようなツールもある程度は「凶器」としての側面を抱えていることは否定できません。
扱いを間違えればその目的が一瞬にして”自己防衛”から単純な”暴行”または”殺人未遂”へと発展し、
被害者のはずが終わってみれば加害者になっていた……などということは決して珍しくありません。
本当にあなたの目的が身を守ることならば、「凶器」としての側面を持った道具を積極的に手にするべきではないでしょう。
それでもあなたがツールを買って持ち歩くというのならば、止めはしませんが……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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