スパーリングが自己防衛能力向上に結び付かない5つの理由
- 2020.07.27
- 護身術
いつも心に1丁の猛獣用ソードオフを。どうもサイコ田中です。
護身術において対人訓練は欠かすことのできないものですが、
一般的なスパーリングは、あまり効果的ではないかもしれません。
何故スパーリングは、身を守ることに結び付かないのでしょうか。
格闘技と護身術の決定的な違い
護身術にまつわる記事では繰り返しお伝えしていますが、
そもそも護身術と競技格闘技(Combat Sports)の間には、決定的な差があります。
まず護身術が極限状態での生存を目的としているのに対し、
格闘技はリング上(またはケージ・畳の上)という限られた環境下で、定められたルールに従い、
体重差がほとんど無い対戦相手と闘うことのみを想定したものです。
リアルファイトの舞台はトイレ・バーカウンター・階段の踊り場など多岐にわたり、
ルールなど無いため凶器の使用も想定しなくてはなりません。
また相手は自分よりも圧倒的にフィジカル面で上回る場合も多く、
服や体の一部を掴まれた時点で終わってしまう可能性さえあります。
また格闘技の試合では事前に対戦相手の情報を集めて準備をする時間が与えられるのに対し、
リアルファイトにそのような事前準備の時間は一切ありません。
トラブルになる相手のほとんどは見ず知らずの第三者であり、
格闘技などのバックボーンも、凶器を携行しているかどうかも知る術がなく、
防衛・反撃の全てがぶっつけ本番と言えます。
このように、格闘技と護身術には明確な差があり、
それぞれに長所・短所があることは確かですが、
あくまでも身を守ることを目的としているのであれば、
格闘技ではなく護身術を学ぶべきというのが、管理人個人の考えです。
(格闘技を学ぶことが、身を守ることに役立たないという意味ではありません)
普通のスパーリングが護身に役立たない5つの理由
ここからは一般的なスパーリングが身を守る上で効果的とは言えない理由について、
練習内容など5つの項目に分けてお伝えします。
防犯・護身に興味をお持ちの方で、
格闘技ジムなどに通われている方などはぜひ一度参考になさってください。
ルールを遵守することが前提になっている
当たり前と言えば当たり前ですが、普通のスパーリングは安全のため、
ルールに従って行うことが大前提となっています。
(中にはルールに従わない人もいますが)
確かに怪我を防ぐため、試合の形式に慣れるためなど様々な理由でルールは設定されていますが、
先述の通りリアルファイトには一切ルールなどありません。
リアルファイトで優先順位の高い攻撃手段である、
・頭突き
・肘打ち
・金的
などが軒並み制限され使えなくなってしまうと、
貴重な対人練習の時間にも関わらず全く実戦的ではない、ただの馴れ合いという印象が強まります。
ルールの無い状況下でのファイトを身に着けるために、
ルールを定めた条件下での対人練習を繰り返しても効果が無いのは自明と言うほかありません。
試合で勝つための戦略しか身につかない
例えばスパーでローキックを蹴るのがとても上手な人も、
試合ではない――目の前の相手を一発で倒さなければならない場面では、
実力を半分も出せないまま追い込まれてしまうでしょう。
ルールが決められた試合で勝つための戦略としてコンビネーションを磨いたり、
相手にプレッシャーをかけるテクニックを身に着けるのは大事なことですが、
極限状態で生き残るためにはまた違ったアプローチが必要です。
・ローキック(カーフキック)
・ボディ(リバーブロー)
・変則的な蹴り技
などは時間で区切られたラウンド制の試合においてのみ効果的なテクニックであり、
護身の目的には適していません。
スパーリングを通して試合で勝つための戦略やテクニックをどれだけ身に着けたところで、
ナイフを構えられたらどうすることも出来ないというのが現実です。
グローブなどの防具が無い状態をイメージしにくい
練習中の怪我を防ぐためにしっかりとプロテクターを身に着けることは重要ですが、
それらの防具類に甘えていると、身を守る能力が低下してしまうかもしれません。
まずリアルファイトにおいてはヘッドギアはおろか、
グローブやバンテージ、マウスピースなども装着する余地はありません。
(稀にマウスピースを持ち歩いているという酔狂な人物もいることは確かですが、
少数派には違いありません)
普段からそうした防具類があることを前提とした練習だけを繰り返してしまうと、
それらを全く身に着けない状態での動きには明確な差が出ます。
ベアナックル(素手)はグローブの半分から3分の1ほどの大きさしかないため、
普段のスパーリングでは通用するディフェンスも使えないことがほとんどです。
(普通の感覚でパンチをブロックしようとすると、相手の拳が手の間をすり抜けてしまいます)
またシンガードを着けない状態での蹴りも自爆のリスクが極めて高く、
よほど脛や足首周辺を鍛えてでもいない限り、本気の蹴りは使えないと考えたほうがいいでしょう。
ボクシングのスパーリングがどれだけ上手でも、バンテージやグローブの無い状態で相手を殴れば、
自身の拳や手首は無事では済みません。
相手との体格差や凶器攻撃などを想定していない
スパーリングは安全のため、実力や体格が近い相手と組む場合が多くなります。
怪我をしないため、そして互いの技術を磨くためにとても重要な「暗黙の了解」ですが、
現実のファイトを想定するならばあまりに甘すぎるというほかはありません。
基本的に人は自分よりも弱い相手にしか戦いを挑みません。
(「弱肉強食」は人間のみならずあらゆる動物について当てはまる原則です)
よってファイトの相手はいつも、自分より圧倒的に大きいか体力のある相手ということになり、
自分と同等かそれより弱い相手というのは、まずありえないと考えるべきです。
また言うまでもなく普通のスパーリングはヘッドギアやグローブを装着し、
一対一の状態で、パンチやキックのみを用いることが前提です。
路上のファイトではナイフを持っている危険人物を相手にする可能性もあれば、
その場にあるもの(落ちている酒瓶や傘など)を武器にする場合も珍しくはありません。
普段から体格差のあるファイトや武器攻撃を練習しなければ、
身を守る能力はいつまでたっても向上しないでしょう。
道着や動きやすい服装での練習
道着やジャージを身に着けての練習が普通には違いありませんが、
リアルファイトの現場であなたが身に着けているのは、道着でもジャージでもなく、
スーツなどの普段着に違いありません。
普段から道着やジャージを身に着けてのスパーリングが当たり前になっている場合、
動きにくい服装で本来のパフォーマンスを発揮するのは困難であり、
自己防衛能力は相対的に低下してしまうと考えられます。
極限状態での生存を想定して訓練するのであれば、
スパーリングはなるべくスーツなど日中自分が身に着けている普段着で行うのが好ましく、
カバンや折り畳み傘といった持ち物を活かしたテクニックも併せて身に着けるのが理想的と言えるでしょう。
特に女性の場合、高いヒールなどを履いた状態でのアプローチを学ぶことは非常に重要です。
スパーリング(対人練習)が全てではない
確かに護身術とは対人技術であり、対人練習なくしては習得しえません。
しかし上に述べた通り、ただ漫然とスパーリングを繰り返すだけでは、
強くなるどころか弱くなってしまう可能性さえあります。
護身を目的としたスパーリング練習を行う場合は、
・ルールを細かく定めない
・タイムを設定しない(時間無制限で行う)
・なるべくオープンフィンガーグローブ着用で行う
・積極的に自分よりも身体の大きな相手と組む
・ラバーナイフなどを使い凶器攻撃を想定して行う
・可能な限り普段着に近い服装で取り組む
といった工夫が求められます。
特にオープンフィンガーグローブ着用での投げ・絞めありの総合ルールで行うのが理想であり、
互いがズボンの後ろやポケットにナイフなどの凶器を持った状態でスタートするのも効果的です。
またバーカウンターやトイレ、電車の車内など限られたスペースでのファイトを想定し、
積極的に狭い場所でのスパーリングに取り組むのも決して無駄ではありません。
対人練習が困難な場合は上に挙げたシチュエーションや現実的なシナリオを想定し、
一人で出来る動作を繰り返すという練習方法もあります。
ある程度はスパーリングを経験しなければ強くなれないことも確かですが、
スパーリングだけでも強くなることはできません。
様々な角度から効果的な訓練方法を探り、
安全かつ効率的に自己防衛能力を高めていく意識が大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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