今日から始める護身術32【0から学ぶヘッドコントロール】

今日から始める護身術32【0から学ぶヘッドコントロール】

いつも心に1丁のヒートガンを。どうもサイコ田中です。

身を守る上で最低限身に着けておくべき基礎知識は数え切れませんが、

相手の頭部をコントロールする――ヘッドコントロールの技術体系は非常に重要です。

何故、相手の頭部を抑えることが大切なのでしょうか。


頭と身体操作の関係性

あまりにも有名な、そして興味深い実験として、

「椅子に座った人の頭を抑えると立ち上がることが出来ない」というものがあります。

これは椅子から立ち上がる際に重心を前方へ移動させることで、

”てこの原理”のようなものが働くことに起因していますが、

これは性別年齢・人種や体格を問わず、全ての人に共通する人体のメカニズムです。

「体格や筋力などとは一切関係が無い」というところがポイントです)

 

もしも管理人が「手段は問わないので、自分よりも大きな相手を倒してください」と言われたときは、

黙って対象の背後から近づき、両手で頭を抱え込みながら強く引き倒します。

(いわゆる「膝カックン」のような動作を付け加えてもいいでしょう)

こうすれば相手がどんなに大柄で屈強でも、必ず倒すことが出来ます。

それは上に述べた実験と同様、頭部が人体のバランスを保つ上で非常に重要な役割を担っているからに他なりません。

 

またムエタイおよびキックボクシングにおいては、

蹴りを放つ際、蹴る方向と同じ向きに首を素早く振ることにより、

蹴りの威力とスピードを各段に向上させることが出来るとされており、

実践している選手の姿は多く見られます。

(フルコン空手などの近代武道においてはそのような癖や予備動作に繋がるものは好ましくないため、

あまり見受けられない傾向にあると言えます)

 

このように人間の頭部はその身体操作並びにボディバランスの形成・維持と密接な関係があり、

特に護身術においては相手をテイクダウン(制圧)するうえで必要不可欠な基礎知識と言えます。


0から学ぶヘッドコントロール

上に述べた通り、頭部をコントロールすることは護身術において非常に重要なタスクの一つであり、

熟練の指導者ほどこの操作に長けているという共通点が見られます。

ここからは全くの初心者・未経験者でも直感的に身に着けて実戦に生かすことが可能な、

ヘッドコントロールの基礎についてお伝えしていきます。

防犯・護身に興味をお持ちの方はぜひ一度参考になさってください。

言うまでありませんが、

ここで紹介する技術体系は必ず自分や身近な人の身を守ることにのみ用い、

犯罪などに悪用することは絶対にやめてください。

 

まずは相手の側面・背後を取ることから

ヘッドコントロールにおいて重要な位置を占めるものは、

立ち位置(ポジショニング)に他なりません。

 

相手の正面に立った状態はいつ致命的な攻撃を受けても不思議ではなく、

それらをブロックすることが出来ても劣勢には変わりありません。

なるべく危険な相手の斜め前から側面、出来れば背後を取るように動き、

正面に立たないことが重要です。

(これはヘッドコントロール以外の分野においても同様のアイデアです)

 

もしも相手があなたの正面に立ちふさがったり、

拳を握ってファイティングポーズを取っているような状況ならば、

あなたの最優先タスクはヘッドコントロール(相手の頭を取ること)ではなく、

相手をその場で、可及的速やかにノックアウトすることです。

パンチや肘打ち、金的への膝蹴りなどを活用してアグレッシブに攻めましょう。

 

相手の頭を捉えたら90度回転させる

うまく相手の斜め前か側面に立ち、会話などで注意を反らすことが出来たら、

頭を捉えに行く準備は完了です。

 

相手の顔と後頭部に素早く手を回し、

相手の後頭部(首の後ろ)がこちらを向くように、

素早く90度回します。

(強く回しすぎると大変危険です。軽く「押して引く」イメージで十分と考えてください)

この際相手の脳を軽く揺らすようなイメージを持ちながら、

「回す」というより「叩く」ような感覚で手を動かすのがポイントです。

(熱したやかんや鍋を両手で小さく回すようなイメージです)

 

そうすると人体のメカニズム上、相手の身体は反射的に首が回ったほう、

すなわちあなたが立っている場所に背を向けるように回ろうとします。

次の瞬間には上に述べた「相手の背後から頭を押さえて引き倒す」というパフォーマンスが可能な体勢になるので、

そのまま相手の頭を胸元へ引き寄せるようにして、素早くテイクダウンします。

相手を傷付けるのが目的ではないため、

必要以上の力は加えず、静かに足元に寝かせるイメージを持ちましょう。

 

正面・至近距離の相手には金的攻撃から

ヘッドコントロールにおいて重要なタスクの一つは、

「相手のアイライン(目線の高さ)を自分の胸より低く保つこと」です。

 

先に述べた通り、人間の頭部は動作の起点となっているため、

ある一定の高さよりも低い位置になると身体的パフォーマンスに影響を及ぼします。

レスリングの試合などを見ていると、

腕の取り合い以外にも相手の頭を押さえつけるような動作が多く見られますが、

これは相手の頭部をコントロールすることで、主導権を握ることを目的としています。

こうした「崩し」はテイクダウンを成功させるうえで非常に重要であり、

何の工夫もなくいきなり仕掛けるよりも、小さな、そして地味な手間をかけた攻撃のほうが圧倒的に成功率が高まり、

致命的な反撃のリスクも低減できます。

 

特に相手が正面――そして手の届く至近距離に立っているような切迫した場面では、

側面を取るように動くのは難しく、また対応の遅れも致命的です。

このような状況では迷わず金的または腹部に素早い攻撃を加えることで、

相手の身体を「くの字」に折ってしまうことが手っ取り早く確実に違いありません。

 

特に金的への素早い膝蹴りは、蹴り足を掴まれるといったリスクも少なく、

両腕をフリーに出来るため理にかなっています。

金的を打たれた相手の身体が前のめりになったら、

すかさず頭部を上から押さえつけ、ダメ押しの肘打ちやハンマーパンチ、

頭部への膝蹴りなどでフィニッシュしてしまいましょう。

(相手が酔客などの場合、ヘッドロックのような形で制圧するのが安全かつ良心的です)

 

身長差などの兼ね合いから金的への膝蹴りが難しいような場面では、

手の甲または手のひらで相手の股間を強打するというアプローチもあります。

いずれの場合も、素早く不意打ちをすることにより、

相手に心と身体の準備をする時間を与えないことが最大のテーマになります。

(攻撃の意思を感じて身構えられたりブロックされた場合、一気に不利な状況に追い込まれることは言うまでもありません)

 

テクニックを組み合わせて運用する

おさらいになりますが、

ヘッドコントロールの基本は、

・相手の斜め前か背後から

・首を90度回して後ろへ引き倒す

・正面からは金的打撃で頭を下げさせる

というものでしたが、

これらは言うまでもなく、組み合わせて運用することが可能です。

 

例えば正面から相手の股間に蹴りを入れ、相手の身体がくの字に折れたら、

そのまま相手の頭を抱えて90度回転させ、

一気に後ろへ引き倒すというテイクダウンも非常に効果的です。

(多少荒っぽいアプローチですが、相手が強い脅威であるならやむを得ません)

 

また相手の斜め前方から頭を取ることに失敗してしまっても、

金的や腹部への素早い攻撃から主導権を握り、

素早くテイクダウンできる体勢へと移行することも出来ます。

 

このように、基礎の技術体系はいくらでも状況に応じて応用・発展させることが可能であり、

その活用方法は使い手次第とも言えます。

より素早く効率的に、そして確実に相手を制圧するために、

どのような組み合わせが理想的か考えながらイメージを膨らませるだけでも、

自己防衛能力は格段に向上するでしょう。


打撃テクニックの練習は欠かせない

上で紹介したテクニックがより効果的に、そして確実に機能するためには言うまでもなく、

パンチや蹴りといった基本の打撃テクニックの練度が重要となります。

 

相手をテイクダウンできなかった場合は組み合った体勢からの殴り合いに発展するため、

フックやショートアッパー、肘打ちなどのテクニックを正しく使える必要があります。

また正面からの金的攻撃を狙う際にも膝蹴りの精度が求められ、

それらの攻撃が失敗した時の保険として頭突き、肘打ち、掌底打ちといったテクニックも知らなくてはなりません。

 

このように、ただ相手の頭部をコントロールして制圧することを目的とするのではなく、

生き残るために使える武器・スキルをなるべく多く身に着けておくという考え方が大切になってきます。

切れるカードが多ければ多いほど迷いや躊躇いに繋がることも事実ですが、

セルフディフェンスにおいて「これしか出来ない」「これしか知らない」というのは非常に危険です。

 

打撃テクニックが正しく機能すればより安全・確実なテイクダウンにも繋がり、

必要以上に相手を傷付けることの無い、スマートな制圧が見えてきます。

 

まずは基本のパンチ・キックの練度を高め、

「瞬間的に相手を圧倒する」イメージを拡大するところから始めていきましょう。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。