【小ネタ】「身体の小さい人が学ぶべき格闘技」という幻想【コラム】

【小ネタ】「身体の小さい人が学ぶべき格闘技」という幻想【コラム】

いつも心に1本のシノ付きカッターを。どうもサイコ田中です。

護身術を扱う情報に目を通していると、必ずと言っていいほど出てくるのが、

「身体の小さい人が勝つための格闘技」とか、

「身体の小さい人が学ぶべき武道」というキーワードです。

とても大切なことなので最初に断っておきたいのですが、

そんなものはこの世に存在しません。

どういうことなのか、一つずつ順を追って説明していきましょう。


「小よく大を制する」は幻想なのか?

日本の伝統的な武道(空手や合気道)に昔から根付いている思想として、

「小よく大を制する」というものがあります。

読んで字の如く、

”身体の小さいものほど大きなものを圧倒できる可能性を秘めている”といったニュアンスになりますが、

そんな都合の良い話があるはずもありません。

 

一般的にそれがどんな分野にせよ、

肉体的なスペック(フィジカル面)が重要視されるような競争の場においては、

身体の大きい人物がより良い結果を出せると相場が決まっています。

 

背が高く手足が長ければ一挙動で発生させることのできるエネルギーはより大きくなり、

格闘技においてはリーチ面(攻撃の射程)で優位に立つことが出来ます。

またシンプルに体重の重さは打たれ強さ(耐久力)と密接な繋がりがあり、

握力や咬合力(噛む力)なども基本的には体重と比例の関係にあるため、

強さ=身体の大きさという構図があることにもはや疑いの余地はありません。

 

「小よく大を制する」という言葉は魅力的に聞こえますが、

「健全な精神は健全なる肉体(身体)に宿る」と同じことで、

本質を捉えれば「有れかし(そうであってほしい)」という願望の込められた言葉であり、

それが現実離れしたビジョンであることは誰の目にも明らかです。

 


「身体の小さい人が勝てる武道」という勘違いとその問題点

巷で護身術などの情報とセットで提供されているのが「身体の小さい人におすすめの武道」ですが、

そんな都合の良いものが存在するはずはありません。

この致命的な勘違いとその問題点は、どのようなところにあるのでしょうか。

 

”身長と技術”の二択問題から見える現実

あなたがもしも小柄な体にコンプレックスを抱いているとして、

「身長が高くなる方法」と「小さいまま強くなれる方法」の2つがあったとしたら、

どちらを求めますか?

 

大多数の方が前者――すなわち「大きな体を手にする方法」を取るのではないでしょうか。

言うまでもなく、身体が小さいまま強くなるよりも、

大きな体を手に入れてから技術を身につけたほうがより強くなるのは明白であり、

あえて小さい身体のまま強くなることを目指す意味はほぼ皆無です。

 

残念ながら人間の成長期は決まっていて、成人してから身長を伸ばすことはほぼ不可能に近いため、

大多数の人が「小さいままで強くなる方法」を求めますが、

そもそも「技術を持った小さな人」は「技術を持った大きな人」に勝ち目は無いため、

最初の前提からして既に崩壊しているのです。

そして残念なことに、この現実に気が付いていない人があまりにも多すぎるのです。

(言うまでもなく、管理人もかつてはその一人でした)

 

「技術を持たない相手」にしか勝つことはできない

前項と繋がる部分ですが、

結局のところこの世の中に存在する武道・武術・格闘技(護身術)の大半は、

「その技術を知らない人物」を打ち負かすために生み出されたものであり、

あえて厳しい表現を用いるとするならば、

「素人にしか通用しない」という意味合いになってきます。

 

上に述べた通り、

同じ技術を持つ者同士であれば身体の大きい人物がより良い結果を出すのは明白であり、

身体の小さい人が自分よりも大きな人と同じ成果をあげるには、

より多くの経験・知識・技術が求められ、それら全てが高い水準でなくてはなりません。

そしてそれは限りなく不可能に近いため、

結局「身体の大きな相手には勝てない」という残念な結果だけが残されることになります。

 

身体の小さな人物が格闘技を極めても、

苦もなく圧倒できるのはその知識や経験を持たない一般人か、

同じ技術を持つ体型の変わらない人物――すなわち同じ階級の対戦相手のみであり、

身体が大きく若い、経験豊富なファイターを敵に回した場合はどうにか生き残るのがやっとになるでしょう。

 

以下の記事でもヒントになる情報を提供しています。ぜひ参考になさってください。

↓ ↓ ↓

【防犯】身体の小さい人が身を守るためのルール【護身】

 

求められるのは柔軟性(人とは違う考え方)

では本当に身体の小さな人物が結果を出すにはどうすればいいか、

答えは明白で、他の人とは何か違う取り組み方をするしかありません。

 

身体の小さな人が大きな相手を倒すためには、

最初から勝ち目のない部分を徹底的に排除して、

特定のパラメータを強化していくのが確実です。

・パワー(瞬間的な破壊力)

・タフネス(打たれ強さ・耐久力)

・リーチ(攻撃の届く距離)

これらのファクタは、どう足掻いても縮めることの出来ない致命的な差になるため、

埋めようとするのは時間の無駄です。

 

・スピード(瞬発力・機動力)

・バランス(安定性・柔軟性)

・タイミング(カウンターの精度)

など、フィジカル面に大きく依存せず、

なおかつ小さな体躯であるからこそ光る部分を徹底的に強化していく事こそ肝要であり、

他に突破口は無いとも言えます。

 

特にテクニックの練度を上げていく事は非常に重要であり、

相手の虚をつくフェイントや出入りの速さを意識したフットワークなど、

突破口はいくつも見つかります。

 

正攻法でぶつかっていくのではなく、

相手の力を受け流すように、自分の持ち味を生かして戦うということが、

「小よく大を制する」ひいては「柔よく剛を制する」の神髄ではないでしょうか。


小柄な人や女性こそ格闘技を学ぶべき理由

勘のいい方は既にお分かりかもしれませんが、

上に述べた事実こそが、翻って考えたとき、

小柄な方や女性こそが武道・格闘技を学ぶべき理由に繋がってくるのです。

 

確かに、身体の小さな人がどれだけ沢山の知識や技術を身に着けたところで、

同じ技量を持つ大きな人物には手も足も出ません。

ですが言い換えれば、何も知らない素人相手には、

勝てないまでも負けるはずはないということになります。

 

何も知らなければ一方的にやられてしまうような場面でも、

もしもあなたが急所への攻撃方法や正確なテイクダウン技術、

相手の関節を極めるサブミッションを知っていたらどうなるでしょうか?

 

小柄な人や女性に向けて開発された武道や格闘技、護身術の技術体系などはこの世に存在しません。

ですが身を守るための技術は知っていることに意味があるのであり、

ジムや道場で自分よりも大きく強い相手と向き合うことによって、

「どう対処するのか」「どのように窮地を切り抜けていくか」を学ぶことにこそ価値があるのです。

 

スパーリングで自分よりも大きく上手なファイターと闘ってボコボコにされるのは、

痛く、苦しく、不愉快な時間に違いありません。

ですがあなたがそうして味わった苦痛や悔しさは、

あなたが本当の意味で強くなるための大きな糧になることを決して忘れないでください。

 

あなたが本気で望みさえすれば、

「小よく大を制する」というイメージは、必ず現実のものにできるはずです。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。