シナリオ別ソロ・ドリルNo.01【正面からのパンチ】

いつも心に1頭のホワイトタイガーを。どうもサイコ田中です。

世界で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本でもいよいよ”外出自粛”が実質的な”外出禁止”へと移行しつつあります。

気軽に外出できないだけでなく、いわゆる”濃厚接触”を回避しなくてはならない以上、

格闘技や護身術など、完全に一人で学ぶのが難しい分野ではどうしてもトレーニングの質が低下してしまいます。

それでも自宅待機の時間を無駄にしたくないという方のために、

一人で行えるシナリオ別(シチュエーション別)ソロ・ドリルを紹介するシリーズをお送りしたいと思います。

今回はその第1回として、非常にオーソドックスなシナリオである「正面からのパンチ」を想定したドリルを紹介します。


パンチは”真っ直ぐ”飛んでこない?

皆さんは「正面からのパンチ」と聞いて、どのような攻撃を思い浮かべますか?

いわゆるボクシングにおけるストレートのような、軌道が直線的で無駄のない打撃でしょうか。

それとも伝統空手に見られるような、素早い踏み込みを伴った刺すような攻撃のことでしょうか。

駅の構内やそこら辺の路上を主な舞台として想定した場合、そうした教科書的・模範的なパンチは飛んでこないと考えたほうがいいでしょう。

訓練されていない、格闘技経験のない素人が放つパンチの大半は、

・肘が外に大きく開く

・拳を大きく振りかぶる

・大きく回旋または円弧軌道を描く

といった形でフォームが著しく崩れていることが多く、特に典型的なものは、

・上体を前に乗り出す(つんのめる)ようにして

・大きく反動をつけて

・左右の拳を交互に振り回す

というものです。これは特にヘイメイカー(Haymaker punch)などと呼ばれており、

見た目こそワイルドですが合理性に欠けており、人体の構造を考慮すると極めて非効率的な攻撃手段ですが、

何の訓練も受けていない人間が他者を攻撃するときは、単に握った拳を反復的に動かそうとする心理が強く働くため、

このような崩れたフォームのパンチが放たれることになります。

特に女性の場合は腕を上から下に振り下ろすようにする、いわゆる「グルグルパンチ」になる確率が高く、

これも非効率的かつ攻撃力の低い打撃には違いありませんが、凶器を手にしているようなときは警戒が必要です。

まとめると、

「素人のパンチは弧を描いて飛んでくるか、前のめりになって両手を闇雲に振り回す傾向がある」ということです。

これから行うソロ・ドリルでは真っ直ぐのパンチではなく、よくある大振りなパンチをイメージして行ってください。


正面からのパンチを想定したソロ・ドリル

ここからは実際に「正面からのパンチ」を想定したソロ・ドリルを紹介していきますが、

まずはしっかりと全身のウォーミングアップ及びストレッチを行い、

最低でも首・肩・腰は硬さを感じなくなるまで動かしてほぐしましょう。

また十分なスペースを確保したうえで、怪我に注意してゆっくりと行ってください。

 

ステップ1:頭部のブロック

両腕で頭を抱え込むようにしてブロックの姿勢を作ります。

文字通り「頭を抱える」ポーズのように両手で後頭部を包むようにして、

前腕から肘にかけてのラインで縦長の窓を作るようイメージするとわかりやすいと思います。

また机に突っ伏して眠るときのように両腕を交差させ、おでこの辺りを保護するようにしても構いません。

両方のスタイルを練習するのが理想ですが、自分の感覚にフィットする(わかりやすい)方法で、

何度かブロックの形だけを作る練習をしましょう。

(自然なスタンスからブロック→元の体勢に戻る……という動作を反復するだけで十分です)

 

ステップ2:攻撃者の懐に入る(タックル)

立て続けに殴られることを防ぐため、ブロックでパンチをしのぎながら、

素早く攻撃者の懐に飛び込みます。

ブロックの形にした両腕を攻撃者の胸元に押し付けるようイメージしながら、

しっかりと顎を引き(足元を見るくらいで丁度いいかもしれません)、

どちらか片方の肩をぶつけるようにして半歩から一歩前に踏み込みます。

ブロックの姿勢のまま身体を開いて正面から相手にぶつかってしまうと、

下からアッパーカットをもらったり、反応のいい相手には膝蹴りを合わせられたりして危険です。

半身を切るようにして上体を斜め前に傾け、肩からタックルするようにして飛び込みましょう。

(ステップ1のブロックと組み合わせ、ブロック→タックルの動作を何度か繰り返してください)

 

ステップ3:攻撃者に抱き着く(クリンチ)

相手の胸元に無事飛び込むことができたら、そのまま相手の背中に腕を回してしっかりと身体を寄せます。

相手の胸元に顔を押し付けるようにすれば、全力で顔面又は頭部を殴打されるリスクはほぼなくなります。

また相手の肩越しに顔を出す、いわゆるハグの体勢をイメージしても構いません。

(攻撃者と体格差が無いか、攻撃者のほうが背が低い場合はハグのような形が安全と考えられます)

この時、相手の両腕を巻き込むようにして押さえつけながら抱き着くようにすると、

安全に攻撃者の動きを制し、反撃の機会を完全に奪うことが可能です。

相手がいないためイメージするのは困難かもしれませんが、出来ればリアルに攻撃者の姿を思い浮かべ、

腕ごと掴んで離さないようなイメージでクリンチの姿勢へ移行するよう心がけていきましょう。

(ステップ1のブロックからステップ3のクリンチまで、一連の流れを確かめながら何度か繰り返してください)

 

ステップ4:フィニッシュ

ずっと相手に抱き着いていても埒が明かないため、コンパクトな打撃を入れてフィニッシュします。

相手に抱き着いたままの姿をしっかりイメージしてください。そこから、

・素早く頭を振って頭突き

・金的に膝蹴り×2

・クリンチを解いて顔面に肘打ち

というコンビネーションへと移行します。

組み付いた姿勢で相手の頭がどこにあるかをしっかりと思い描いたうえで、

下から上に頭を振るか、首を傾げて側頭部をぶつけるようにして頭突きを叩き込みます。

(狙うのは相手の頬から口元にかけてのラインか、鼻が理想的です)

その場で足踏みをするような感覚でどちらかの膝を上げると金的に当たるので、そのまま2回膝で金的を叩きます。

(上手くいかない場合は相手の内ももや下腹部に狙いを定めると、必ず一発は股間に命中します)

最後にクリンチの体勢を解除しながら、顔面に肘を打ち込んでフィニッシュです。

肘を上から下に抱えて落とすようにすると大ダメージを与えることができます。

 

以上、4つのステップをすべて組み合わせた動作を、ゆっくりと繰り返していきましょう。

しっかり相手の姿を思い浮かべることが大切ですが、難しければ最初は動きだけを確かめても構いません。

ゆっくりとブロックから入り、タックル、クリンチ、コンビネーションまでの動作をミスなく再現できるまで反復してください。

何度やっても間違えない自信がついたら、次は背格好の異なる色々な攻撃者の姿を想像しながら取り組んでみましょう。


対応がワンパターン化しないために

日本は治安の良い国なので、普通にしていれば路上のファイトなどは一生に一度経験するかどうかです。

そのたった一度のファイトを生き残りさえすればいいのであれば、対応はワンパターンでも全く問題ありません。

「これだけ知っておけば大丈夫」ということはありませんが、1つのテクニックだけでもきちんと再現できれば、

一定の生存率は確保されるでしょう。

しかし更に高い信頼性と自信を手にしたいのであれば、やはり選択肢の数や対応の柔軟性はある程度要求されます。

人には選択肢が多いと迷って判断が遅れるという特性があるため、闇雲にオプションを増やすのは好ましくありませんが、

対応がワンパターン化した結果追い詰められるというケースは十分に想定されます。

ブロックから攻撃までの流れに変化をつけるなどして、

リアクションがワンパターンにならないよう工夫していくことは大切です。

上で紹介したドリルも慣れてきたら、

・ブロックをヘッドスリップ(頭を動かすディフェンス)に変える

・タックルから素早く頭突き・肘打ちへ移行する

など変化をつけることでワンパターン化を防ぐと同時に、応用力が磨かれます。

自分だけのディフェンス・スタイルを確立し、楽しみながら強くなっていきましょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【宅トレ】サンドバッグが無くても出来る打撃トレーニング【護身術】

いつも心に1本の錆びついた4番アイアンを。どうもサイコ田中です。

新型コロナウイルスの蔓延に伴い自宅待機が余儀なくされる中、

ストイックに自分を追い込むトレーニングに励んでらっしゃる方も少なくないでしょう。

今回はそんな自宅トレーニングをより刺激的に、そして効果的なものにするために、

サンドバッグを使わずに行える打撃トレーニングをご紹介いたします。


怪我を防いで楽しく鍛えるために

今回は直接モノを叩くトレーニングを紹介するわけですが、いくつか注意点があります。

まず、格闘技の経験が全くなく、これまでサンドバッグやミットを一度も叩いたことが無いという方は、

なるべく柔らかいものから叩くようにしてください。

いきなりハードなターゲットを叩いてしまうと、拳や手首はもちろん、肩や肘などの関節がこれまで経験のない衝撃に耐えかね、

思わぬ怪我に繋がる恐れがあり大変危険です。

まずはなるべく柔らかいものから叩き始め、慣れてきたら硬さや重さを加えるようにしていくことで怪我のリスクを軽減できます。

また同様にして正しいパンチや蹴りのフォームを把握していない場合も、首や腰に負担がかかったり、転倒して怪我をする可能性があり危険です。

ある程度シャドーボクシングなどで自分の身体に適した自然なフォームを身に着けたうえで取り組むようにしてください。

言うまでもありませんが、手首や拳のコンディショニングが不十分なままでハードなターゲットを叩くと怪我に繋がります。

最低でも拳立て伏せ10回以上、指立て伏せ10回以上を連続で行えることが目安です。このラインをクリアできていない場合は、

まず基本の腕立て伏せから始め、拳立ておよび指立てが普通に10回以上こなせるようになりましょう。

手首と指先のストレッチも忘れずに。


サンドバッグの代わりになるものとトレーニング方法

ここからはサンドバッグの代わりになるアイテムを、それらを使ったトレーニング方法と併せて紹介します。

路上のファイトなどセルフディフェンス全般に興味をお持ちの方はもちろん、

自宅にサンドバッグが無くフラストレーションが溜まっている格闘技経験者の方にも取り組んでいただける内容となっております。

事故や怪我に十分注意し、周囲の安全に配慮した環境で行ってください。

 

クッション・枕

一番身近で安全なミット代わりのアイテムは、何といってもクッションまたは枕でしょう。

思いきり叩いても怪我をする心配がほとんどないにも関わらず、

しっかりとインパクトの感触が得られるため初心者の方には持って来いのターゲットです。

掴んで殴る、両手で抱えて膝蹴りをするなどオーソドックスな打ち方のほかに、

顔を押し付けるようにしてクリンチの練習をしたり、そこから頭突きや肘打ちに繋げる動作も確認することができます。

普段硬いミットやサンドバッグを叩いているという方には物足りないかもしれませんが、

硬めの枕や低反発クッションを重ねるとそれなりの重さと強度が生まれインパクトの感触が大きくなります。

破れて中身が出てしまわないよう、カバーを重ね掛けするか、

ダクトテープ(ガムテープ)等でぐるぐる巻きにして補強してから叩くようにしましょう。

 

サッカーボールまたはバスケットボール

サッカーボールやバスケットボールはそれなりに強度があり、なおかつ一定の反発力があるためパンチング・バッグとして利用可能です。

強く叩きすぎると破損する可能性があるため注意が必要ですが、

ダクトテープなどで補強するか、本気で叩かないように工夫すれば怪我も回避できます。

その形状や大きさは人間の頭をイメージすることに適しており、

床に置いた状態でマウント状態を想定したパンチ連打(パウンド)、肘打ちなどの練習が理想的と言えます。

ネットなどに入れてぶら下げることができる場合はダブルエンドバッグのように反発を利用したディフェンスの練習も出来、

一石二鳥と言えます。

もしも本気でぶつけられる壁が近くにあるなら、メディシンボールのように壁に向かって全力で投げつけるだけで、

パンチを打つのに必要な全身の連動性を磨くことも出来ます。

しっかり下半身の力を使い切り、腰を回して上半身から腕に力を伝えるイメージを持ちながら投げていきましょう。

 

古い電話帳・漫画雑誌

古い電話帳や分厚いコミック雑誌をお持ちの方は、それらをガムテープ等でぐるぐる巻きにすることで”巻き藁”のように扱うことができます。

薄い雑誌も重ねることで同様の使い方できるため、適度な硬さと強度が感じられる厚さになるまで束ねましょう。

床に置いてボコボコ殴りつけて拳を鍛えるのが主な使い方ですが、

壁などに貼り付けることが可能な場合はゆっくりと色々な角度でパンチを打ち込んでもいいでしょうし、

脛の強さに自信があるなら蹴ってもいいでしょう。(反発が小さいため前蹴りや膝蹴りには適さないと考えられます)

このターゲットは想像より硬さがあるため、軽く叩いて不安を感じたときには叩く面にタオルを被せるか、

薄いクッションを挟むようにすることで安全性が確保できます。

 

ボストンバッグ・ドラムバッグ

強度のあるボストンバッグやドラムバッグをお持ちの方は、

そこに古い衣類や紙オムツのようなものを詰めることでサンドバッグの代わりとすることができます。

床に置いてボコボコ殴るだけでなく、抱えて後ろ向きに投げる、両端を掴んで膝蹴りを打ち込むなど、

かなり自由度の高い使い方ができます。

ボストンバッグの素晴らしいところは、水を入れたペットボトルなどを詰めることでケトルベルのような使い方も出来るようになり、

打撃と同時にケトルベル・スイングのような全身連動性を高めるワークアウトにも活用できる点です。

手ごろな大きさのバッグが無い場合は強度のあるリュックサックまたはスポーツバッグでも代用が可能です。

掴んで殴る、叩きつけるなど、思いつく限りの様々な攻撃方法を試してみましょう。

 

古いマットレスなど

大量に埃が舞うためオススメは出来ませんが、もう使っていない古いマットレスや布団なども、

打撃ターゲットとして活用することは可能と言えます。

マットレスを使う場合はそのまま壁に立てかけるようにして、

布団は圧縮袋などに入れて適度に空気を抜くことで安全に運用できます。

マットレスも布団も叩くと大量に埃が出るため、部屋の通気性を高めてしっかり換気しながら行うか、

しっかりマスクを着用して叩くようにしましょう。


サンドバッグの自作はハードルが高い

最終手段として、”サンドバッグを自作してしまう”という選択肢もあるのですが、

費用やリソース、スペースなど諸々考慮してもハードルはかなり高い印象があります。

まず強度を満たすためにある程度しっかりした土台を作るところから始まりますが、

そんな都合のいい素材は一般人が簡単に手に入れることはできません。

古いタイヤを積み上げてサンドバッグを作る方法などがYoutube上に多く見られますが、

廃タイヤも特別なコネでもない限りタダでは手に入りませんし、

何より本当に作れたとしても衛生面において不安が多すぎてとても使えません。

他にもサンドバッグを自作する方法は沢山ありますが、どれも特別なスキルや知識を持たない一般人には難易度が高く、

本当に安全に使えるものを作れる可能性は限りなく低いと考えられ、オススメは出来ません。

何か硬く重いものを叩きたくなった時には上で紹介したような身の回りのアイテムを有効活用し、

怪我に注意しながら、自分のペースで楽しくトレーニングしていきましょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今日から始める護身術28【腕をコントロールする際のポイント】

いつも心に1袋の冷凍ホウレンソウを。どうもサイコ田中です。

護身術で当たり前のように扱われる技術体系の一つに「手や腕のコントロール」が挙げられます。

相手の攻撃を防ぎながら、自分にとって有利な体勢を維持することが主な目的ですが、

効果的に運用するにはいくつか重要なポイントを把握している必要があります。

今回はそうした手や腕のコントロールにまつわる基本的な考え方についてお話ししたいと思います。


簡単に触らない・触らせないことが大切

セルフディフェンスにおいて、手が触れられるような距離に攻撃者を立たせることは、

それ自体が既に一つのミスです。

危険な場所や相手に近づかない、近寄らせないことが護身の第一歩であり、

真っ当な危機管理や防犯の意識を持ち合わせている人間にとって常識的な対応です。

手で触れられるような距離に危険な思想を持った人間が近づいた場合、

・距離を置く

・逃げる

・助けを呼ぶ

といった基本的な選択肢が全て失われてしまい、「やるしかない」という状況を強いられる可能性が高くなります。

危険を察知するか違和感を感じるといった初動対応のスピード感はもちろん、

危機感を覚えてからの反応の速さも、いざという時身を守る上では重要になってきます。

スマホの操作に集中しがちという方は時々画面から顔を上げる習慣を、

音楽を聴きながら通勤・通学する習慣のある方は音量やヘッドホンの密閉性などに注意し、

常に一定の注意力・警戒レベルを維持できるよう意識していきましょう。

また少し触られただけで激昂したり、ありもしない痴漢の被害を訴える厄介な相手も少なくありません。

攻撃者を簡単に近づけないだけでなく、自分自身が安易に手を出さないように気を付けましょう。


相手の腕をコントロールする際の注意点とちょっとしたコツ

ここからは攻撃者の手や腕をコントロールする際に気を付けるべきポイントについて、

知っているだけで応用力が身につくちょっとしたコツと共に解説します。

つかみ合いの場面や興奮している人物を抑える際などに有効なテクニックとなっています。

防犯・護身など身を守ることに興味をお持ちの方はぜひ参考になさってください。

 

掴まれた腕はそのままでいい

よく護身術のパフォーマンスとして「腕を掴まれたら」というシナリオが見られますが、

片方の腕を掴まれているくらいなら、ジタバタすることはありません。

最も恐ろしいのは、片方の腕を掴まれたまま、

・もう片方の腕で殴打される

・強く引っ張られる

・凶器を突き付けられる

といった状況であり、「腕を掴まれている」という状況そのものにはそれほど大きな脅威はありません。

ほとんどの人は掴まれた腕を力任せに振り払うか、引き抜こうとする傾向にありますが、

興奮している相手は一度や二度ではあきらめず、何度振りほどいてもまた掴もうとしてきます。

このようなシチュエーションにおいて、無理に相手の手を振りほどく必要はありません。

あなたの目的がさっさとその場を離れることならば、空いているほうの腕で思いきり相手の顔面を殴りつけましょう。

(危険極まりないアプローチですが、これが最も手っ取り早く確実です)

それでも相手を手を離さなければ間髪入れずにもう一発、二発と立て続けに攻撃し、

あなたが「相手に危険を感じなくなるまで」手を出し続けてください。これが一番大切なことです。

相手に強い悪意や攻撃の意思が見られない場面で、まだ話が通じる状況であれば、

掴まれていないほうの腕で相手の空いているほうの手を掴むことで状況のエスカレートを回避できます。

傍目には大の大人が両手をつなぎ合って……という珍妙な光景に見られるかもしれませんが、

どちらも傷つかない膠着状態であり、最も安全性の高いのスタンスです。

服を掴まれるなどしている場合はまた対応が変わってしまいますが、

基本的に掴まれてるほうの腕で攻撃される心配はありません。

左腕で掴まれているなら、飛んでくるのは右のパンチだけです。

落ち着いて顔または頭の左側をブロックできるような体制を作り、肘打ちや膝蹴り、頭突きなどでカウンターを狙っていきましょう。

 

凶器を持っている腕は必ず両手で抑える

基本的に、相手の片方の腕を両手でコントロールするのはご法度とされています。

空いているほうの腕で、がら空きの顔面を好きなだけ殴られるからです。

ですが相手がナイフなどの凶器を持っている場合は例外です。

もう片方の腕で殴られようが何をされようが、凶器を持っているほうの腕を全力で抑えなければ命はありません。

凶器攻撃を止められなかった場合は致命傷を負う確率が極めて高く、

特にナイフなどの鋭利な刃物で太い血管や神経の集中した部位を攻撃された場合のリスクは計り知れません。

(心臓など命に関わる臓器を傷付けられた場合も同様です)

相手の手に凶器が見えたときは、凶器が握られているほうの腕(前腕)を両腕で抱きかかえるようにホールドし、

絶対に引き抜かれたり振りほどかれたりしないよう、しっかり体重をかけることがポイントです。

全体重を相手の腕へ預けるようなイメージで真下に力を加え、凶器の先端が地面のほうに向いている状態を維持できれば、

ある程度時間を稼ぐことはできます。

膠着状態には違いないため、ここから武装解除→制圧へと移行する必要がありますが、

一人ではあまりにも難しいため、警察などの応援が駆けつけるのを根気強く待ちましょう。

凶器を持った相手に対しても、諦めなければ勝機はあります。

 

両腕に対しては必ず両腕で応じる

あなたと攻撃者の体力が同程度なら、片腕同士の力比べは互角になるでしょう。

しかし相手が両腕で掴みかかってきたのに片腕でどうにかしようとしていたら、恐らく勝ち目はありません。

相手が両腕を使ってきた場合には、あなたも両腕で応じる必要があります。

よくあるシナリオは、

・前から両手で首を絞められる

・横から両手で片方の腕を引っ張られる

・両手で胸倉をつかまれる

などであり、いずれも片方の腕でどうにかしようとしてもうまくいきません。

(まして相手のほうがフィジカル面で上回っているような場面ではびくともしないでしょう)

このような状況ではしっかり両手で相手の腕をつかみ返すか、

凶器攻撃の対応と同様に相手の腕一本に対して両腕で対応する必要があります。

ただし、強い身の危険を感じているなど本当に切迫した場面においては、

先述の通り「相手の腕をどうにかする」のではなく、「その場からは離れること」を優先し、

相手のがら空きの顔面に頭突きやパンチをお見舞いするほうが、よほどスマートな対応になると考えられます。

特に相手のほうがフィジカル面で上回る場面において、一度でも掴まれた場合そこから脱するのは容易ではありません。

相手はあなたの服や体の一部を掴むために両腕を使い、顔面をカバーできない状態になっているのですから、

黙って顔にパンチや頭突きを、腹部や金的に膝蹴りなどを叩き込んだほうがよほど効率的で効果的に違いありません。

相手のほうが強いとわかりきっている場面でなければ後々過剰防衛に問われるリスクも無視できませんが、

身を守るためにはやむをえません。そういった意味では、迷ったらとりあえず手を出すという対応も間違いではないでしょう。


腕力と体幹の強化は必須

私はこれまで腕の細い指導者・インストラクターというのを見たことがありません。

腕力は相手をコントロールすることはもちろん、

パンチを打つ、攻撃をブロックするというところにも大きく関与しており、護身の目的を果たすうえで絶対に無視することはできません。

また単純な腕力のみならず手首の強さ、握力の強さも組際や武器攻撃、武装解除において重要となります。

前腕が太くなるようなトレーニングを週に最低でも2回は取り入れ、

二頭筋のような上腕ばかりにフォーカスしたワークアウトにならないよう注意しましょう。

更につかみ合いやクリンチ状態での攻防、制圧が必要な場面では体幹の強さもカギになります。

少し押されただけでフラフラしたり、腕を強く引かれただけで体勢を崩されていては命がいくつあっても足りません。

日ごろからプランクや片足立ちなど、体幹部分にしっかり効かせるメニューにも取り組み、

強い軸と安定したボディ・バランスを自分のものにしておきましょう。必ず役立つ時が来ます。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

セルフディフェンスとスポーツビジョン

いつも心に大さじ1杯の白味噌を。どうもサイコ田中です。

突然ですが皆さんは、スポーツビジョンという言葉をご存じでしょうか。

いわゆる動体視力や瞬間視・周辺視など、スポーツのパフォーマンスと関係する視覚機能の総称であり、

競技力を左右する重要なファクタとして注目されています。

今回はそんなスポーツビジョンを自己防衛(セルフディフェンス)に活用するためのアイデアとトレーニング方法についてお話ししたいと思います。


情報の8割近くは「目から」得られる

人間には様々な知覚器官がありますが、そのほとんどは犬や猫などに比べ感度が鈍く、

情報収集には適さないとされています。

その中でも人間が信頼性の高い情報を集めることのできる器官の一つが、眼球(視覚)です。

匂いや音、気配などが十分に感じ取れなかったとしても、

・火や煙が出ている

・何かが光っている

・誰かがこちらに向かってくる

などといった情報は、目から確実に獲得することができます。

特にトラブルの現場など緊迫した場面では対象との距離が接近している傾向にあり、

目から得られる情報量とその価値は他の感覚器から得られるものとは比較になりません。

普段から色々な場所や人を見る、たくさん目を動かすといったことを心がけ、

視覚から得られる情報量を増やす工夫を重ねていくことにより、危機管理能力は間違いなく向上していきます。


護身に関連するスポーツビジョンとその鍛え方

ここからは身を守ることに関連するスポーツビジョンについて、

私自身が実際に取り組んでいるトレーニング方法と共に解説していきたいと思います。

 

瞬間視

身を守る上で大切なことは、なるべく短い時間に多くの情報を集めることです。

目から得られる情報量の比重が大きいことは既に述べた通りですが、

情報を収集するのに時間がかかっていては「逃げる」または「抵抗する」機会を逸してしまいます。

路上で予期せぬ対人トラブルに巻き込まれたとき、

・相手の凡その年齢と体格

・服装と所持品の特徴

・ナイフなど凶器の所持

・周囲に仲間がいるか

などといった情報は体感的に”一瞬”ほどの短い時間で集められなければなりません。

あなたがぼんやり相手の様子を窺っているうちにどんどん相手との距離は縮まります。

凶器を持っている場合は、その存在を見抜けなければあっけなく命を奪われる恐れさえあるのです。

もしもトラブルになった相手に明確な悪意や脅威を感じたときには最低でも、

・両手が見えているか

・上着やズボンのポケットが膨らんでいないか

・格闘技経験者の身体的特徴(餃子耳・拳ダコ)が見られるか

ぐらいは瞬時に確認できるようにしておきたいものです。

 

瞬間視を鍛えるうえで私がオススメしたいのは、フラッシュ暗算です。

一瞬だけ表示される数式の答えを導き出し、その解を足すまたはかけるといった方式が一般的ですが、

フラッシュ暗算の魅力は何といっても瞬間視のみならず脳のトレーニングにも繋がっているところです。

ただ漫然と一瞬だけ表示される文字や数字を見て答えを当てるというトレーニングも効果が薄いわけではありませんが、

完全に反応速度と視力のみに依存するため、セルフディフェンスのような思考と反応の両面が重視される分野にはそれほど適しません。

見てから考える、見ながら考えるといったトレーニングは全体的な反応速度と対応の正確さを高めるうえで非常に重要です。

現在ではスマートフォン向けのアプリなども多数存在するため、そのようなものを活用しながらゲーム感覚で鍛えていくのが効果的でしょう。

 

周辺視

瞬間視に次いで非常に重要なスポーツビジョンが周辺視です。

セルフディフェンスにおいて「視野の広さ=選択肢の多さ」と言い換えることも出来、

見えているもの、得られている情報量が多ければ多いほど、対応は柔軟かつ最適化されます。

よって「見たい」「見よう」と思った対象物にのみ焦点を合わせるのではなく、

広い視野で全体を観察し、捉えることのできる情報を限界まで拡張する必要があります。

周辺視を鍛えることで注視しているもの以外の動きや特徴を観察でき、

初動の遅れやトラブルのエスカレートを未然に防ぐことが可能となります。

 

周辺視を鍛えるオススメのトレーニングは、速読です。

よくある本をバラバラとものすごい勢いでめくっていって、内容が頭に入っているというアレですが、

セルフディフェンスに関連付けるためにやってもらいたいのが、

ファッション雑誌の速読なのです。

「雑誌で速読とか馬鹿じゃねえの」と言われても仕方がないかもしれませんが、

私はこのトレーニングをセキュリティとして勤務していた時代からずっと継続しています。

ファッション雑誌は別に何でも構いません。男性向けでも女性向けでも、特に縛りや条件はありません。

意識してもらいたいことは、

・モデルの髪の長さや服の色など条件を決める

・手の周辺を特に意識する(手ぶらか、そうでないか)

・なるべく全速力でページをめくる

という3点です。

まず、モデルの容姿の条件を決める目的は「ターゲットの設定」です。

あなたを狙う攻撃者の外見的特徴をイメージし、その特徴に該当する対象が何人見つかったか数えておき、

最後にゆっくり答え合わせをしてください。これにより自分が「どの程度見えているか」がわかります。

また手の周辺に気を付けることで、武装の有無を見分ける訓練になります。

攻撃者の多くは手に凶器を持っているか、カバンやポケットの中に隠していることが大半です。

もしもポケットに手を突っ込んでいたりカバンで手を隠しているようなときには、それを見逃すことは致命的なミスになります。

写真のモデルが丸腰(手ぶら)であるかそうでないかを瞬間的に見極めるように努め、

慣れてきたら「このページとこのページに何か持ってる人がいた」と振り返れるようになりましょう。

最後にページを全力でめくる意味は、集中力を無駄遣いしないためです。

ゆっくりダラダラ行い、「ミスしても次がある」と思うといい加減になり効率が下がります。

雑誌を使った速読トレーニングを行う際は、「答え合わせも含めて中を見るのは2回まで」などとルールを明確に設定したうえで、

「絶対見えない」と思うほどのスピードでめくることを心がけましょう。

これだけで集中力と反応速度が飛躍的に向上します。

(速読は周辺視のみならず瞬間視のトレーニングにもなるためオススメです。もちろん読むのは普通の実用書などでも結構です)

 

眼球運動

動いている対象に対して眼球を追従させる能力です。

掴みかかってくる手やパンチ・蹴りなどを目で追う、凶器攻撃の軌道を見極めるなど、

主に直接的ディフェンス面に深く関連し、生まれ持った運動神経や動体視力にある程度依存します。

静止視力とも関連するためあまりに視力が悪い場合は向上させるのが困難になるかもしれませんが、

継続的にトレーニングを行うことで改善できる余地はあると考えられます。

 

眼球運動のトレーニングとしてオススメなのが、自分の親指を追いかけるビジョン・トレーニングです。

非常にオーソドックスなメソッドで、やり方はいたって簡単、

片手または両手の親指をあちこち色々な方向に動かし、それを両目で追いかけるだけです。

指を動かす速さはゆっくりで構いません。

上下左右、斜めなど様々な方向に動く指先に意識を集中し、しっかり眼球を追従させることがポイントです。

疲れ目の解消にもなるので、休憩時間に1回3分ほど、1日2回から3回を目安に取り組んでいきましょう。

 

眼と手との協調性

眼球と手先の連動は格闘技は勿論、様々なスポーツにおいて非常に重要なスポーツビジョンです。

特に対象のみならず自分自身も動いているような場面や、

動いているもの(相手の頭や腕など)に合わせて的確に攻撃・防御しなければならない護身の分野では必要不可欠とも言えます。

この能力が欠如している場合は、どれだけ強いパンチが打てても、またどれだけ卓越したディフェンス技術を持っていたとしても、

本来の力を十分に発揮できない可能性が高くなると考えられます。

 

眼と手の連動性を高めるうえで効果的なトレーニングとして私が取り組んでいるのは、

テニスボールを使ったシャドーボクシングです。

特に難しいことはありません。左右どちらかの手にテニスボールを持ち、

一度バウンドさせている間に好きなコンビネーションを一回挟み、

「最後にパンチを打ったほうの手」で掴む。これだけです。

例えば基本のワン・ツーの場合であれば、最後はストレートなので右手でボールを掴みます。(サウスポーの場合は左)

顔の高さにまでしっかりボールをバウンドさせる必要がありますが、

もしもボールの高さが低くなったときはボディを打ったほうの手でキャッチするなどして変化をつけることも出来ます。

うまくいかなくても、しっかりボールを掴もうとする意識を持つだけで眼と手の動きが少しずつシンクロしていきます。

ミット打ち(パッドワーク)でも同様の効果が得られますが、トレーニングパートナーが見つからない時にはこのようなトレーニング方法もあります。

自宅でコソコソ鍛えておられるという方は、ぜひ参考になさってください。


瞬間視・周辺視はどこでも鍛えられる

現代人はパソコンにスマートフォン、ゲーム機など目に負担をかける端末に強く依存した生活を送っています。

かくいう私もスマホゲームや動画を観たりして、いつの間にか目がしょぼしょぼしていることも珍しくありません。

視野を広げ、観察力や周辺視・瞬間視を鍛えるためにも、

どんどん顔を上げて遠くを見るようにしていきましょう。

雑誌を使った速読を紹介しましたが、普通に通りを歩いている人や駅で向かいのホームにいる人を見て行ってもいいのです。

変なことをしていると思われるかもしれませんが、

一瞬だけ人や物を見てその特徴をなるべく多く、そして正確に説明するというのは効果的なトレーニングです。

スマホから顔を上げた瞬間にすばやく目を閉じ、その時点で見えたものを思い浮かべましょう。

学生は何人いましたか?

傘を持った人は?

電光掲示板にはどんな文字列が並んでいましたか?

頭の中で情報を整理出来たら、目を開けて答え合わせをしてみましょう。

これを1日何回か繰り返すだけで、瞬間視・周辺視は飛躍的に向上してきます。

眼から得られる情報量をどんどん増やして、危機管理能力を更に高めていきましょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【器具なし】自宅でゆっくりソロ・トレーニング【親子でも】

いつも心に1丁のプラズマ・ライフルを。どうもサイコ田中です。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本はもちろん世界中で外出自粛や対人接触回避といった対応が推奨される中、

自宅で待機を強いられているという方は少ないと思われます。

今回はそうした自宅で時間を持て余しておられる方に向けて、

自分のペースでゆっくり安全に行えるソロ・トレーニングを紹介したいと思います。

***記事カテゴリを「護身術」としていますが、息抜きの運動(筋トレ)としても活用していただける内容となっております。***


外出自粛の今こそ”地味な反復練習”を

性別年齢を問わず、とにかく現代人には時間がありません。

あれこれ用事をこなしているうちに気づけばもう夕方……ということはよくあることです。

料理や読書、筋トレなどやりたいこと、やらなければならないことに割ける時間は限られてしまうかと思われますが、

新型コロナウイルスの蔓延により自宅待機を強いられている今こそ、時間をしっかり使い切っていく意識が大切です。

普段は雑にやっている部屋の掃除を丁寧にやってもいいでしょうし、

積みあがっている本やゲーム、プラモデルの山を崩していくのも面白いでしょう。

そんな余裕のある時にこそ集中して取り組みたいのが、地味な単純作業・反復運動などです。

私はとにかくキーボードのブラインドタッチが苦手でどうにもタイピングがヘタクソなので、

この機会にブラインドタッチの練習に取り組もうと考えています。(ブログの執筆もブラインドタッチの練習という意識で続けています)

また普段は適当にやってしまいがちな体幹トレーニングも、

地味で面倒くさいチューブを使ったワークアウトも、真面目に取り組むいい機会として捉えています。

普段は30分から1時間しか使えない時間が5倍にも6倍にも膨れ上がっている今、

「時間がかかる」とか「余裕がない」という理由で遠ざけていたあらゆる物事に対して、

一切言い訳せずに向き合う姿勢とモチベーションの維持こそが最大の課題です。

ものぐさで何をやるのも面倒に感じてしまうという方も、普段から高いモチベーションを保てているという方も、

自分にとって「嫌なこと・面倒なこと」から率先してクリアしていきませんか。


自宅でゆっくり強くなるソロ・トレーニング

ここからは自宅でゆっくり安全に行えるソロ・トレーニングの内容を、

ウォーミングアップから順を追って紹介していきます。

普段運動習慣のない女性はもちろん、高齢の方やお子様にも実践していただけるよう、

全体的に強度の低いトレーニング内容となっています。

ぜひ親子で一緒に楽しく動いてストレスを解消し、免疫力を高めていきましょう。

ダンベルなどの器具は一切必要ありません。タオルが1本あれば十分です。

***十分なスペースと安全性を確保した環境で行ってください。

また集合住宅等にお住いの場合は階下や隣室の方に配慮してなるべく静かに行い、

運動中に痛みや違和感が生じた場合は、すぐに中止してください。***

 

ウォームアップ(動的ストレッチ)

怪我を防ぐうえでウォームアップは欠かせません。

10分から15分間、全身の筋肉をほぐすイメージでリラックスして行っていきましょう。

動的ストレッチを兼ねた動きで構成されているため、ストレッチを別途行う必要はありません。

 

左右パンチ連打(ラッシュ)

脚を肩幅に開いてゆったりとファイティングポーズを取り、

顔の高さに真っ直ぐパンチの繰り出していきます。

最初はゆっくりと繰り返し、肩の周りや背中の筋肉がほぐれてきたら、徐々にペースアップしていきます。

顔の高さよりも上にパンチを打つことで肩に刺激が入り、

下を向いてパンチを打つことで肩甲骨の動きがスムーズになります。

余裕のある方は500mlのペットボトルを両手に持って行うことで強度を高めることが可能です。

 

リバースランジ・キック(スクワット・キック)

パンチ連打が終わったらファイティングポーズのまま、

片方の足を後ろに2歩から3歩分引いて、膝が床に触れるギリギリまでゆっくりと腰を落としていきましょう。

太ももの前側の筋肉(腸腰筋)がストレッチされるのと同時に、下半身と体幹部(腹筋・背筋)が刺激されます。

左右の足で交互に何度かリバース・ランジの動作を繰り返したら、

今度はランジの体勢から戻るのと同時に前方にキックを放っていきます。

膝が曲がったり、ふらついたりしても構いません。

腰からお腹の高さを目安に、足を投げ出すようなイメージで蹴っていきましょう。

キックの動作によりハムストリングス(太ももの裏側)の筋肉もストレッチされます。

もしもランジでうまくバランスが取れなければ、スクワットの動作から前方へキックでも構いません。

 

肘打ち・ヘッドスリップ

ランジ・キックが終わったらそのままファイティングポーズを保ち、

利き腕側の足を半歩から一歩後ろに下げ、やや斜に構えてください。

そのまま左右の肘を、大きく円弧軌道を描くようにして前に突き出します。

肘打ちのポイントは、しっかり脚と腰を回し切り、下半身から力を伝えることです。

こうすることで打撃の破壊力が増し、回旋動作により背中から腰回りを無理なくストレッチさせることができます。

肘打ちを何度か繰り返したら、ファイティングポーズを保ったまま上半身を左右に倒していきましょう。

前から飛んでくる真っ直ぐのパンチをかわすイメージで、

上半身を斜め前に倒すようにするのがポイントです。

肩から背中、腰の周辺でうまく脱力を意識できると、ヘッドスリップがスムーズになっていきます。

上半身全体のストレッチにもなるので、構えを左右でスイッチしたりして肘打ちと組み合わせながら行っていきましょう。

 

自重トレーニング

自宅で行うトレーニングとして絶対に外せない自重を使ったトレーニングです。

体力や運動習慣の有無などレベルに合わせて強度を柔軟に変化させることが可能となっています。

痛みや違和感のない範囲で、楽しみながら行っていきましょう。

 

腕立伏せ(プッシュアップ)

上半身を総合的に鍛えることのできる万能メニューです。

10回から12回を目安にゆっくりと行い、難しければ床に膝をついて行うか、

壁を押す動作を15回~20回繰り返すことでも同様の効果が得られます。

体力に自信のない方はまず10回の壁押し(Wall-push)から始めていきましょう。

もちろん自信のある方は拳立てや指立てを行っていただいても結構です。

10回~12回を1セットとし、30秒から1分間のインターバルを挟んで3セットを目標に行っていきましょう。

(お子様を背中に乗せて行っていただくのが管理人のオススメです)

 

プランク(ボディ・ソー)

床に左右の肘をつき、腕立て伏せの姿勢のように上体を浮かせて支えます。

お尻にもしっかり力を入れ、腰が反りすぎたり、お尻が上がりすぎないよう注意しましょう。

プランクの姿勢は30秒を目標に維持し、難しければ時間を短くするか、膝をついて行っていただいても構いません。

余裕のある方はプランクの体勢を1分程度維持するか、プランクの姿勢のまま上体を前後に揺するボディ・ソーに挑戦しましょう。

 

スクワット・アッパー

ウォームアップにて行ったランジ・キック(スクワット・キック)とよく似た運動です。

脚を肩幅よりやや広く開いて立ち、ゆったりとしたファイティングポーズを取ってください。

そこからなるべく素早く腰を落とし、立ち上がると同時に左右のアッパーを打っていきます。

アッパーカットの打ち方は大体で構いません。

大切なことは、下半身から上半身へと力を伝える連動性をしっかり意識することと、

限界まで同じ動作を繰り返して下半身を追い込むことです。

回数などは決めず、下半身が苦しくなってくるところまで行っていきましょう。

もちろんフックやストレートなど、アッパー以外のパンチを打ってもOKです。

 

タオル引き(タオル・プル)

適度な長さのタオルを一本用意してください。

あとは簡単、タオルを上下左右、色々な方向に精一杯引っ張るだけです。

限界のところまで力を加えたら、そこから20秒~30秒維持してみましょう。

肩や前腕(握力)などが無理なく鍛えられます。

またお子様と一緒に行う場合、1本または2本のタオルを引っ張りあうのも面白いかもしれません。

(十分安全に配慮したうえで行ってください)

 

シャドー・ボクシング

トレーニングの締めにシャドーを行うことで脂肪燃焼効果が高まるのと同時に、

全身の筋肉をほぐす効果が期待できます。

無理せず自分のペースで、ストレス解消を兼ねて楽しみながら行っていきましょう。

ここではシャドーを行う際の注意点を、コンビネーションの例と共にお届けします。

 

ワン・ツー

ボクシングにおける最も基本的なコンビネーションです。

足を肩幅に開いて立ち、そこから利き腕側の足を半歩から1歩後ろに下げて斜に構えます。

前に出ているほうの腕は目線の高さに、利き腕側の拳は顎にしっかりくっつけましょう。これで基本のファイティングポーズは完成です。

そこから前のほうの手(右利きであれば左手)を真っ直ぐ前方に打ち込み(ジャブ)、

戻すと同時に利き腕(右利きであれば右手)側のパンチ(ストレート)を打ち込みます。

ジャブとストレートのような直線軌道のパンチを打つ際は、肘が外に広がらないよう注意しながら、

腕が大きく回旋したり円弧軌道を描くことの無いよう、最短距離を点と線で結ぶイメージで打つことが大切です。

 

ワン・ツー・スリップ

ワン・ツーがスムーズに出来るようになってきたら、上体を左右に倒すスリップの動作を加えていきます。

ウォーミングアップで行ったヘッドスリップの動きを思い出し、

上体をやや斜め前方に傾けるイメージで頭を振っていきます。

しっかり基本姿勢(ファイティングポーズ)を維持したまま、ワン・ツーの後に右スリップ、

ジャブの後に左スリップなど変化をつけていくことで、パンチだけでなくディフェンスの技術も身に付きます。

もちろんスリップ→パンチとしても構いません。スリップとパンチを組み合わせて自分だけのコンビネーションを作ってみましょう。

 

ワン・ツー・カバー(ブロック)

ワン・ツー・スリップもスムーズに出来るようになってきたら、今度は腕でパンチを防ぐ動作を加えてみましょう。

ワン・ツーを打った後に構えが崩れないよう注意しながら、両方の前腕で顔を覆い隠すようにブロックの形を作ります。

相手のワン・ツーを防ぐイメージでしっかりとブロックの体勢を維持したら、間髪入れずにワン・ツーを繰り出していきましょう。

ワン・ツー・ブロック、ワン・ツー・ブロックというリズムを体で覚えながら、

時々ヘッドスリップも混ぜるとディフェンス技術の幅が広がっていきます。

パンチをブロックするときにはしっかり顎を引くのがポイントですが、

普通に構えている時もやや顎は引いておき、上目遣いに前方を見るようにする癖をつけるといいでしょう。

(どうしても顎を引くのを忘れてしまう時には、顎の下に丸めたタオルやテニスボールを挟むのが効果的です)


オススメはホールド種目で「ながらトレ」

デスクワークで普段は座りっぱなしという方は立ったままの、

立ちっぱなしの仕事をされている方は上半身にフォーカスしたホールド系種目が特にオススメです。

やり方はいたって簡単、つま先立ちや前後に脚を開いたランジの姿勢を、限界まで維持するだけです。

大きな動きも少ないため静かに行えるうえに、体幹安定性の強化にも役立つ優れた種目でありながら、

テレビや好きなネット動画を見ながら行えるという圧倒的な強みがあります。

普段は座りっぱなしでいることが多いという方はスクワットの体勢を維持するスクワット・ホールドを、

立ちっぱなしの作業が多い方は腕立て伏せを一番下まで降りたところで止めるプッシュアップ・ホールドを取り入れてみてください。

体力に自信の無い方は、つま先立ちの姿勢を維持するだけでも構いません。

怠惰なだけの空き時間が、ハードなワークアウトの時間へと生まれ変わることでしょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【小ネタ】怪しい教室(ジム)・セミナーの特徴と共通点【コラム】

いつも心に1リットルの生理食塩水を。どうもサイコ田中です。

格闘技や護身術だけでなく、どんな分野にもそれを習うための教室やセミナーが存在しますが、

中にはデタラメを教えているようなところもあることは事実です。

今回はそんな残念な、あるいは怪しい教室またはセミナーが持つ特徴・共通点についてお話ししたいと思います。


ジム選びは「人間関係」を第一に

格闘技や護身術に限った話ではありませんが、

「なんとなく」で選んだり「家から近いから」という理由でジムや教室を決めてしまうと、

後々後悔することに繋がるかもしれません。

あなたにとって格闘技や護身術を学ぶことが趣味の一つに過ぎなかったとしても、

大切な時間やお金、エネルギーを費やすのですから、それらが無駄になることは徹底して避けるべきです。

・会費が高すぎる

・参加者(会員)のモチベーションが低い

・指導者が何だか胡散臭い

など、直感的に「ここは合わないな」と思ったらすぐに別のジムを探すようにしましょう。

逆に少し会費が高かろうがやる気のない人が混ざっていようが、

本当に信頼できる指導者と仲間に出会えたなら、通い続ける価値はあると言えます。

どんなことにも当てはまることですが、結局のところ人は一人では何もできません。

まして相手がいるからこそ練習が成立する格闘技や護身術において、

共に過ごす仲間と指導者の存在は何よりも重視されるべきです。

一期一会、一回一回の練習とその中での出会いを大切にし、

互いに切磋琢磨していけるトレーニングパートナーに巡り合えることが、

あなたのジム選びにおけるゴールの一つであることはもはや語るまでもありません。


怪しい教室(ジム)・セミナーの特徴と共通点

ここからは今日までの私自身の経験に基づき、

残念な、あるいは怪しい(胡散臭い)教室やセミナーが持つ特徴と共通点を紹介します。

格闘技や護身術に興味があり、近くでジムや教室をお探しの方や、

現在通っているジムの指導内容などに不信感をお持ちの方はぜひ参考になさってください。

 

指導者の身なりが怪しすぎる

これは本当にどの分野でも珍しくないことだとは思いますが、

指導者の服装・身なりがあまりに不自然で胡散臭い、というのはよくある話です。

典型的な例を挙げるとすれば、

・髭が長すぎる

・長髪を後ろでまとめている(お下げ?)

・腕や上半身に入れ墨がびっしり

・なんか変なアクセサリーをぶら下げている

・ボディビルダーに近い外見

などがわかりやすいかと思われます。

まず髭や髪の毛が長すぎるという特徴ですが、

このような指導者はそれらを攻撃者につかまれるという事態を全く想定しておらず、

今日まで「本物の実戦」の経験が無いことが容易にうかがえます。(普通は邪魔なので短髪または坊主頭にします)

また腕や肩、背中などの目立つ場所にびっしりタトゥーを入れているような指導者も疑わしいと言えます。

従軍経験や収監された過去を持つ人物であればむしろ信頼性は高まりますが、

そのようなバックボーンが無いにもかかわらず入れ墨を入れているような人物は、

内面に後ろめたい部分があったり自信の無さを隠そうとする意図が表れているため師事する相手としてふさわしくありません。

(「抑止力」と言い訳して相手を脅すために入れているようなパターンは最悪です)

同様に、髑髏や十字架を象ったような奇抜な形状のアクセサリーを沢山身に着けているような人物も注意が必要です。

また格闘家というよりボディビルダーに近いような外見をした人物も、

「強さ=身体の大きさ」という偏った思想を抱えているケースが多いため過信は禁物です。

 

スピリチュアルな分野に依存している

私自身、「内面から強く」という考え方には概ね同意ですが、

だからといって宗教やスピリチュアルな分野に傾倒するのは少し違うと感じます。

日本人がやっている教室でも外国人が主催するセミナーでもよく見られるのですが、

・変な十字架や神棚みたいなものを祀っている

・練習の前後に怪しい儀式みたいな時間がある

・ジムの近くに教会または怪しい団体のテナントがある

といったケースは珍しくありません。本当によくあります。

こうしたジムや教室の問題点は、技術的な指導よりも、

いわゆる「教え」を学ぶことばかり重視する傾向にあるため、何も実践的なテクニックが身につかないまま、

時間やお金がどんどん無駄になってしまうということに他なりません。

新しいグローブやファールカップを買えるお金で変な教材を買わされ、

挙句の果てには怪しい老人の「講話」を聞かされいつの間にか「信者」の一人に……という怖い話はよく耳にします。

他の会員が妙にニコニコ愛想がよかったり、しきりに宗教団体への入会を勧められるようなときは警戒しましょう。

(この手のジムは見学・体験を拒否する傾向にあることも併せて覚えておきましょう)

 

会員の目が死んでいる

ネタっぽくなってしまいますが、これもよくある残念なジムの共通点です。

目が死んでいる会員または練習生に共通するのは、

・向上心を失い惰性で練習している

・心に深い闇を抱えている

・指導者に逆らえない空気が出来ている

などであり、ポジティブな要素はどこにもありません。

向上心を失ってしまっているパターンでは、在籍期間が長いのに結果を出せていないような人や、

自分が強くなった実感を得られていない人が多く、練習内容の信頼性が疑われます。

また心に闇を抱えている人の場合、その多くが危険な思想を持っているため距離感に気を付ける必要があります。

(練習中にパートナーを怪我させたり、練習中に黙っていなくなるのはこのパターンが多い気がします)

一番最悪なのは、指導者に逆らえない雰囲気が出来上がっていて、

恐怖心から来る萎縮と緊張により眼の光を失っているパターンです。

このようなジムまたはセミナーでは文字通り「指導者の言うことが絶対」であり、

逆らうと練習が中断したり全員が理不尽なペナルティを受けるなど劣悪な練習環境に置かれる可能性が高く注意が必要です。

いわゆる「俺様タイプ」「上官タイプ」の指導者はピンキリで、

中にはしっかりした指導方針や理念を持った人物もいるため一概には言えませんが、

参加者や会場の責任者などに対して高圧的に接したり暴力的な言葉遣いを繰り返すようなときは別のジムを探したほうがいいでしょう。

 

セクハラ・モラハラが目立つ

女性会員に対するセクハラであったり、

言葉や行為によるパワハラまたはモラハラが冗談では済まされない頻度で見受けられるようなジムは好ましくありません。

このようなジムは特に上で述べたような「指導者が絶対」の空気になっていることが多く、

誰も問題を指摘したり注意したりできないままずるずると状況が悪化してしまうため、

「ここは良くない」と思った時点で退会するべきです。

そのようなジムは出来れば他の参加者と一緒に「一斉退会」して経営破綻させ、

指導者ごと再起不能にしてしまうのが最も理想的と言えるでしょう。


ジムやセミナーはどんどんバックレていい

社会的に印象があまり良くないため出来ればきちんとした手続きを踏むべきですが、

個人的に格闘技や護身術のジムやセミナーであれば、どんどんバックレていいと思っています。

急に練習に現れなくなると心配されたり、迷惑をかける可能性があることも確かですが、

格闘技や護身術などのように激しい体育会系の集まりでは参加者が黙っていなくなることはそれほど珍しくないため、

指導者はもちろん参加者のほうもそれほど影響を受けない傾向があるように感じられます。

・スパーでボコボコにされてから来なくなる

・サーキットトレーニングの途中で逃亡

・金銭トラブルを起こして出禁

などは日常茶飯事のレベルであり、

誰かが来なくなってもほとんどの人はそれほど気にも留めませんし、

居なくなった人間の話題は皆無意識に避けます。

だからいきなりいなくなっても大丈夫という論法は多少乱暴かつ無責任ではありますが、

「練習がきつすぎる」「ジムの空気が合わない」「ついていけない」と思ったときは、

無理せず練習を休んだり、通うのを辞めてしまっても問題ないと思います。

一番大切なのはあなたが自分らしく生きることであり、

合わないジムで練習中に怪我などしていては元も子もありません。大切な時間やお金も無駄になってしまいます。

あなたの目的がプロになることであったり、選手として結果を残すことなら話はまた違ってきますが、

「あくまで趣味程度」であるとか「運動のため」と割り切っているのであれば、

ジムをバックレるのはそこまで悪いことではありません。どんどんバックレていきましょう。

あなたが安全に、そして楽しく学べるジムに巡り合えることを祈っています。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ただ「逃げる」だけでは助からないケースと適切な対応について

いつも心に1冊のブラックベルト・マガジンを。どうもサイコ田中です。

最も簡単で効果的な護身術はとにかく全力で走って逃げることであり、

物理的に攻撃者を遠ざけることに他なりません。

しかしただ逃げただけでは助からないどころか、より状況を悪化させてしまうケースも存在します。

今回はそうした「逃げる」が通用しない場面と適切な対処法についてお話ししたいと思います。


まずはトラブルを回避するところから

危機管理にまつわる記事では再三にわたりお伝えしていることではありますが、

自己防衛の第一歩はまずトラブルを回避するところから始まります。

相手との距離感や最低限のマナーを守ることは勿論、

時には自分や身近な人を守るために正義感や倫理観というものを内に秘めることも必要です。

喫煙している未成年者や酔っ払い、大声で話している外国人などを見ると声をかけたり、

注意しなくてはという気持ちが生まれるのは自然なことです。それ自体は悪いことではありません。

ですが世の中には少なからず「声をかけてはいけない人物」が存在します。

これらの人物を敵に回しトラブルに発展してしまった場合、どのような危険な目に遭ったとしても不思議ではありません。

言葉や態度、表情や視線などで相手を刺激しないよう細心の注意を払い、

もしも距離を置けるなら最初からそのような危険人物には近づかないことが肝要です。

また万が一トラブルになったとしても、語気を強めたり敵意などを露わにしてはいけません。

性別年齢を問わず、人目をはばからず大声で互いを罵りあったり何事か喚き散らしているような人を見かけますが、

・大声を出す

・相手を非難するような視線や言葉を浴びせる

・攻撃的なボディランゲージを繰り返す

などといった行為は緊張状態を強めてトラブルをエスカレートさせる可能性があり大変危険です。

明らかに相手に非がある場面でも落ち着いた口調と態度で接し、相手を今以上興奮させないよう意識することが大切です。

(簡単に言えば「できる限り大人の対応をしましょう」ということです)


「逃げる」が通用しない4つのケースと正しい対処法

ここではただ単に「逃げる」だけでは助からないかもしれないケースと正しい対処法を、

シチュエーション別に4つ紹介したいと思います。

知っているだけで危機管理能力の向上が期待できる内容となっておりますので、

防犯や護身、自己防衛に興味をお持ちの方はぜひ参考になさってください。

 

攻撃者が武装しているとき

相手が刃物や鈍器などを手にしている場面ではその場からなるべく速やかに離れることが求められますが、

攻撃者との距離が縮まった場面では注意が必要です。

明らかに相手の攻撃が届かない距離で周囲の安全を確保できている状況であればまずは「逃げる」ことが最適解になりますが、

もしも手の届くような距離やあっという間に縮まる程度の距離しか確保できていない場面では、

相手の武装解除を優先しなければ危険かもしれません。

凶器攻撃で最も恐ろしいのが背後など死角からの攻撃であり、

もしも相手の手が届く距離で背を向けて逃げてしまった場合は、

背中を切られたり後頭部などの危険な部位を凶器で強打される危険性があり、大変危険です。

またもしも十分な距離を確保できていたとしても、シンプルに攻撃者のほうが足が速かったり、

バイクのような機動性の高い乗り物を利用されるとあっという間に追いつかれる危険性があり、

結果的に背を向けて逃げたことが裏目になる可能性があります。

このような状況ではどれだけ困難でも相手の武装解除と制圧を最優先にすべきであり、

攻撃者から距離を置くのは応援が駆けつけるなど、十分安全が確保されてからにするべきでしょう。

 

攻撃者が一人ではない可能性があるとき

トラブルになった相手が一人きりのように見えても、周囲を観察すると仲間や関係者と思しき人物が見つかることがあります。

このような状況では逃げると挟み撃ちに遭ったり退路を断たれたりして、

結果的に一対多数という最悪な状況に陥る可能性は十分考えられます。

勝ち目がないと判断したり状況の悪化を回避するため「逃げる」選択をするのは間違いではありませんが、

周囲の状況などから「逃げる」ことが最適であると言い切れる場面でなければ逆効果になる恐れがあることを忘れてはいけません。

逃亡を試みた結果挟まれたり追い詰められたりして一対多数の形になってしまうくらいなら、

まだ一対一の状態で相手をノックアウトしたほうがよほど安全であり、無傷で済まないにしても一定の生存率は確保できます。

もしも「逃げるか戦うか」の判断を迫られたときには一度冷静に周辺の状況などを見極めたうえで、

確実に逃げ切れると判断した時のみ「逃げる」選択をしましょう。

(逃げられない場面の多くは残念ながら「やる」しかありません)

 

攻撃者が近親者または悪質なストーカーの場合

逃げることで置かれた状況を悪化させる最たる例は、

相手が家族や恋人などの近親者や、ストーカーだった場合でしょう。

目の前に差し迫った危険がある場合は逃げることが最適解であり、それ以上は無いとも言えますが、

このようなケースでは結果的に逃げてしまったことが裏目に出て、もっと危ない目に遭う可能性があります。

まず近親者から逃れるにあたって真っ先に考えつくのが自宅ですが、この場合は攻撃者の拠点に踏み込むようなものなので自殺行為となります。

同様にして知人や親せきの家に逃げ込むというのも好ましくありません。

あなたの近親者またはストーカーが危険な思想を持っている場合、交友関係は全て洗われている可能性が高く、

些細なきっかけで居場所が特定されてしまう恐れがあるため大変危険です。

この場合は知人や友人など、逃げ込んだ場所にいる第三者も巻き込んでしまう恐れがあるため二重の意味でリスクが高く、

よほど緊急性の高い場面でもない限り回避するのが無難と言えます。

また相手が悪質なストーカーの場合、TwitterやFacebookといったSNSから個人情報を特定し、

Phone Trackerのような位置情報アプリで居場所を監視される恐れがあります。

このような場合は逃げても逃げても携帯電話の電源を切るか全く関係のない場所に端末を放置でもしない限り逃げ場はなく、

かえって自宅の場所などを特定されてしまう危険が高まります。

もしも身辺に不安を感じたり、悪質なストーカー被害が2週間以上続く場合は速やかに警察に相談し、

信頼できる人物の助けを求めるなどの対応が求められます。

(携帯のGPSを使った追跡のリスクは、相手が家族や恋人のような近親者のような場合でも想定されるため特に注意が必要です)

 

DV(ドメスティック・バイオレンス)については、ぜひ以下の記事も参考にしてください。

↓ ↓ ↓

近親者による暴力(DV)と向き合う際の5つのポイント

 

防衛者が運動不足または肥満傾向にある場合

攻撃者ではなく防衛側であるあなた自身の問題です。

もしも運動習慣などがなく身体が硬かったり、心肺系(スタミナ)が十分鍛えられていなかった場合、

逃げる過程で怪我をしたり息が上がって動けなくなるといったリスクを無視できません。

生き残るために逃げたのに結果的に怪我をしたり追い詰められたりしているようでは本末転倒です。

また同様にして肥満傾向にある人も注意が必要です。

体重が重すぎる場合は満足に走ることができず、もし走れたとしても膝や腰にかかる負担は計り知れません。

もしも首尾よく逃げ出せたとしても、攻撃者に追いつかれたときには息も上がり、すでに足腰が限界……。

これでは命がいくつあっても足りません。

日ごろ運動習慣がない方はせめて就寝前にハムストリングス(太ももの裏)やアキレス腱など、

走る動作に関連する部分だけでもストレッチすることを心がけましょう。

また肥満気味の方は適度な有酸素運動を取り入れ食事をしっかりと管理し、

走ることに支障が出ない程度まで身体を絞る必要があります。


Run,Hide,Fightの3原則+α

もしも運よくトラブルの現場や危険な相手から距離を置くことができたとしても、

簡単に気を抜いてはいけません。

上に述べた通り攻撃者が仲間を呼ぶ、車に乗るなどして追撃してくる恐れは十分にあり、

ただ単に距離を置くだけでは身を守れない可能性があります。

北米式自己防衛メソッドの基礎にRun,Hide,Fightという3つのルールがあります。

Run,Hide,Fightはそれぞれ

Run=逃げる

Hide=隠れる

Fight=戦う

であり、日本人の多くは最後の一つ、Fightの部分を、

Call=人や警察を呼ぶ

に置き換えるのが理想的とされています。

もしも攻撃者から距離を置くことに成功した場合はそこで気を抜かず、

次は安全な場所に身を隠すことを目標に動きましょう。

そうして隠れることに成功してもなお攻撃を受けるような極限状態では速やかに警察に通報し、

必要であれば武装するなどして精一杯抵抗を試みることが大切です。

これは最近日本国内で問題になっている”煽り運転”などのロードレイジ案件でも力を発揮する考え方です。

まずは逃げること、身を隠すこと、そして助けを呼ぶことを最優先とし、

攻撃者と直接向き合う時間をなるべく短くするよう心がけましょう。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【防犯】本当に役立つトレーニング・メソッドと安全な練習方法【護身】

いつも心に1匹の凶暴な野ネズミを。どうもサイコ田中です。

最近は治安の良い日本でも防犯意識が高まり、特に都市部では護身術を学ぶ人が増えているそうですが、

日本国内で学べる普通の護身術の多くは、凡そ現実的とは言えないものです。

今回は本当に役立つテクニックや知識を身に着けるためのトレーニング方法を、

体力や経験、安全面などに十分配慮したうえで紹介していきたい思います。


なぜ日本人が学ぶ護身術は”デタラメ”なのか?

日本で指導されている護身術はその多くが「デタラメ」「インチキ」「使えない」と言われます。

何故でしょうか?

まず日本にお住まいの方が護身術と聞いて連想するのは合気道のような、

腕などを掴まれた状態で逆に相手を投げ飛ばすような技術体系になると思われますが、

そもそも合気道は護身術ではありません。

とても大切なことなので繰り返します。合気道では身を守れません。

合気道は体重移動やフットワークなど、身体の使い方を学ぶ武道であり、

目の前の相手を倒すこと・制圧することなどは最初から想定されていません。

また合気道と関連して”小手返し”や相手の手指の関節をどうにかして脱出するようなテクニックを思い浮かべる方も多いかと存じますが、

これらも全く持ってナンセンスであり、本来の意味での自己防衛には結びつきません。

相手の腕や手の指の関節を少し捻って脱することができるような局面は、差し迫った命の危機などとは程遠く、

子供の喧嘩のように生易しいものに他なりません。

本気であなたを傷付けようとしている人物が、たかが手首を捻られた程度で掴んだ手を離すでしょうか。

自分より身体の大きい相手を、闘牛士か何かのように華麗に翻弄できるでしょうか。

あなたが本気でを身を守りたいと思っているなら、自分が置かれる可能性のある極限状態を、なるべく鮮明に思い描いてください。

生半可な技術や知識でどうにかなる場面は数えるほどしかありません。

護身術として何らかの格闘技や武道を学んでいる方も、”命の危機”において自身の習い覚えた技が本当に意味を持つか、

自分自身に改めて問い直してください。

私はとあるセミナーで現役の軍人インストラクターに「遊んでるのか?」と失笑された日を忘れたことはありません。


本当に役立つトレーニング・メソッドと安全な運用方法

ここでは本気で身を守るために役立つトレーニングの方法を、

体力や経験、環境等に考慮つつ、安全な運用方法と共に紹介したいと思います。

防犯、護身に興味をお持ちの方はぜひ参考になさってください。

トレーニングパートナーが見つからない方のために、一人で行えるトレーニングも紹介しています。

 

普段着を着用した状態でのワークアウト

ほとんどの護身術セミナーで蔑ろにされてしまう重要なファクタとして、

普段着でのトレーニングが挙げられます。

あなたが外出するとき、いつも練習の時と同じようにラフで動きやすい恰好をしていますか?

仕事柄ジャージや柔軟性の高い作業着を身に着けているという一部の人を除けば、

大多数が運動機能を無視した服装がデフォルトになっているのではないでしょうか。

外出時にジーパン・Tシャツという服装が多い方は練習の時も同じような恰好で臨んでください。

同様にスーツを着用する機会が多い方は破れても困らない古いスーツを、

タイトな服装が好みという方は可能な限り運動性を損ねないよう工夫したうえで、

ミット打ちやスパーリングなどに取り組むことが大切です。

これだけで練習の質がガラリと変わります。

怪我を防ぐため、練習前は動きやすい服装(ジャージ等)を着てしっかりとウォームアップし、

ストレッチを入念に行ってください。

またタイトな服装で臨む場合はポケットの中に何も入れないようにし、

腕時計や余計なアクセサリーなどは外すようにしてください。

 

一対多数のスパーリング

路上で想定される最悪のシチュエーションの一つに、

一対多数で逃げ場のない状態が挙げられます。

普段から1対2または1対3といった極めて不利な状況下を想定したワークアウトに取り組んでおけば、

いざという時パニック状態に陥ることを回避し冷静に立ち回れるスキルと自信が身に付きます。

この練習に取り組む際の注意点は、

攻撃側もディフェンス側も、本気で動くということです。

怪我を防ぐためにトレーニングパートナーのことを考えて手を抜く人がいますが、

それでは相手のためにならないことは勿論、自分自身の役にも立ちません。

練習の時点で意識して極限状態を作っていく事が、本当の切迫した場面での対応力に差をつけることは明らかであり、

手加減された難易度を体が覚えてしまうと、実戦で全く動けないという最悪のシナリオに繋がりかねません。

例え相手が女性でも年配の方でも、パートナーと自分自身のために、本気で取り組む意識とイメージを共有していきましょう。

怪我を防ぐためにしっかりとプロテクター、マウスピースを着用し、

体格差が大きい場合は防衛側の武装を許可するなど戦力のバランスを保つ工夫が必要です。

ダミーナイフなどの取り扱いにも十分注意が必要です。

 

ロールプレイ・ドリル

護身術が正しく機能するために欠かすことのできないトレーニングが、

ロールプレイ形式での反復練習です。

一対多数スパーと同様に攻撃側と防衛側に分かれ、

・攻撃側はナイフで武装した強盗

・防衛側は帰宅途中の道路を歩いている

・防衛側はツールを携帯していない

など細かくシチュエーションを設定し、それらに沿った武装解除・制圧を繰り返し練習するというものです。

基本的に攻撃者と防衛者は一対一の形で行い、

1分から30秒という短い時間で区切ったうえで、

・ナイフで5回以上刺されると防衛失敗

・ナイフを武装解除できた場合は防衛側の勝利

といった具合にルールを決めて行うのが最も効果的と考えられます。

このトレーニングを安全に行ううえで欠かせないのは、レフェリー役の存在です。

怪我や練習中の過剰なヒートアップを防ぐとともに、しっかりと時間を管理する重要な役割を担うため、

ある程度の経験と知識が求められますが、不安な場合はレフェリー役を二人以上設定すれば安全性は十分確保できます。

攻撃者、防衛者、レフェリー役をインターバルごとに交代し、ぐるぐると反復するのが一般的です。

 

開始状態のみを決めた自由組手

リアリティを高めるうえで効果的なレッスンが、

開始時の状態だけを設定した自由形式のスパーリングです。

・胸倉をつかまれた状態

・横から両腕で首を絞められた状態

・後ろから羽交い絞めにされた状態

など、オーソドックスな局面を想定し、

「開始」の合図から先は攻撃側も防衛側も、何をやってもいいとするハードコアなトレーニングとなっており、

普通のグラップリングや打撃のスパーとは異なり、

・相手の服を掴む

・髪の毛を掴む

・(武装して行う場合は)ナイフを抜く

など、文字通り何でもありで行うことが最大の特徴となっています。

このトレーニングを繰り返すことにより、

「どのテクニックは現実的で、どれが使えないか」をしっかり体験として覚えることが可能となります。

出来ると思っていたことが出来なかったり、効かないと思っていた技が実際には案外使えたり、

気づきや発見の多い極めて実践的なトレーニングですが、怪我のリスクも高くなります。

必ずレフェリー役を一人以上設定し、パンチなどの攻撃は全て寸止めで行うことを徹底しましょう。

ヘッドギアやマウスピースの着用も忘れずに。

 

「不意打ち」にフォーカスしたソロドリル

護身の鉄則は「急所への不意打ち」ですが、

それだけを練習する時間を設けるセミナーや道場は限定的のように見受けられます。

ほぼ棒立ちに近い体勢から、

・相手の話を聞く振りをしながらのパンチ

・頭を下げて謝る素振りを見せながらの頭突き

・財布を取り出す動きを見せてからの金的蹴り

など、タイミングや動き出しの隙の大きさなどを考慮しつつ、

一撃で相手を倒せる不意打ちのパターンをいくつも繰り返し練習することは必ず力になります。

この練習は一人でも安全に行えますが、一人で取り組む際にはできるだけ攻撃者の姿をリアルに思い浮かべ、

距離感や立ち位置なども考えながら行う必要があります。

また特にパンチを練習する際には、自分の顔や胸の高さばかりでなく、

必ず自分よりも大きな相手を想定し、少し高い位置を狙う練習も忘れてはいけません。


対人練習の反復は大切だが……

陸の上で水泳の練習ができないように、

相手がいない状態で護身術を身に着けるのは無理があります。

しかし対人練習だけを漫然と繰り返せばいいという考え方はあまり好ましくありません。

スパーリングには常に怪我のリスクがあり、加減ができない(知らない)パートナーと組んでしまった場合、

日常生活が困難になるほどのダメージを負う可能性も決して無視できません。

まただらだらと対人系のドリルを繰り返し行ってしまった場合は状況別の対応がパターン化されてしまい、

結果的に応用力や柔軟性が損なわれ総合的な防衛能力が低下する恐れもあります。

どんな技術もパートナーがいなければその使い道や効果を理解するのは困難に違いありませんが、

対人練習だけがすべてではないということも忘れてはいけません。

横一列に並んでのパンチやキックの練習がどんなに馬鹿馬鹿しくても、それらには必ず意味と理由があります。

決して基礎練習を疎かにすることなく、常に高い向上心を持って取り組む姿勢が何よりも大切です。

そしてそうした高い意識とイメージを共有できる仲間を持つことが、強くなる一番の近道であることは言うまでもありません。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

極限状態を想定した”ハードコア・トレーニング”のメリット・デメリット

いつも心に1匹のオオグソクムシを。どうもサイコ田中です。

アメリカや中東を中心に軍事やセキュリティの分野において新たな主流となりつつある、

いわゆる”ハードコア・トレーニング(Reality-based Training)”ですが、

昨今では日本国内でもマガジムや一部の法人向けセミナーで受講できる機会が増えてきました。

今回はそうしたハードコア・トレーニングの練習内容とその効果、リスクなどについてお話ししたいと思います。


日本人が想定すべき”極限状態”とは?

そもそも犯罪率が低く世界的に見ても高い水準の治安が保たれている日本という国において、

極限状態とはどのような状況を意味するのでしょうか。

まず日本はアメリカのような銃社会ではありませんので、鉛玉が飛び交うことは通常考えられません。

(地域や場所によっては一定のリスクが想定されます)

よっていわゆるガンディフェンスや銃器を用いるタクティカル・トレーニングの類は身に着ける必要性があまりありません。

車上荒らしや窃盗、強盗などは他人事ではありませんが、

南米や海外のいわゆるスラムと呼ばれる地域のような差し迫ったリスクは皆無に等しく、

犯罪集団も目立たないように動くため高度なナイフ・ディフェンス技術等も要求されません。

(そもそも刃物を持った相手と向き合うべきではありません)

”煽り運転”などのロードレイジ案件は2018年ごろから急激に増加の傾向を見せつつありますが、

一般的な交通ルールを守って運転している限りはほとんどのドライバーにとって無視できる程度のリスクしかないという印象であり、

とりあえずドライブレコーダーさえ積んでおけば命に関わるような状況は回避できそうです。

日本人が想定すべき”極限状態”は1か月に1回発生するかどうかの凶悪犯罪や交通事故ではなく、

地震や台風などの天災や、現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスなどのようなウイルス感染であり、

防災の知識や具体的な対策案などを身近な人と共有するほうが、よほど役に立つのかもしれません。


ハードコア・トレーニングのメリット・デメリット

本気で身を守りたいなら、ハードコア・トレーニングに取り組むのがもっとも確実であり、

短時間で確かな実力と自信が身につくことに疑いの余地はありません。

その一方で、通常のトレーニングに比べて大きなリスクと問題点を抱えていることも事実です。

ハードコア・トレーニングにはどのようなメリット・デメリットが考えられるのでしょうか。

 

ハードコアトレーニングのメリット

ハードコア・トレーニングのメリットは主に、

・短時間で無駄なく必要な知識と技術が身につく

・本当に効果があるメソッドのみで構成されている

・銃やナイフなどあらゆるガジェットを扱える

などであり、極めて実践的かつ効率的であることが窺えます。

 

短時間で無駄なく効率的なトレーニング

ハードコア・トレーニングではだらだらとミットやサンドバッグを叩いたり、

エアロビクスのように気持ちよく汗を流す時間はありません。

軍人や刑務官などが2週間から1か月と言った短期間で必要な技術と体力を身に着け、

現場で即戦力となることを想定されたトレーニングメニューが組まれるため、

文字通り「遊び」はありません。

練習内容の大半はフィジカルを徹底的に追い込む体力強化重視のワークアウトであり、

スパーリングをはじめとした対人練習、シチュエーション別の模擬戦など完全に軍事分野での実務を想定した内容となっています。

 

「使えない」技術体系は徹底的に省かれる

実務を想定していると述べた通り、ハードコア・トレーニングでは徹底して現実的なテクニックのみ採用され、

その効果が少しでも疑われるような技術体系は容赦なく省かれています。

例えば一般的な護身術に見られる「小手返し」などは相手がフィジカル面で上回る場合は効果が薄れるか使えないため、

代替スキルとして近距離での打撃技を中心としたコンパクトなアプローチや、

最初から急所のみに的を絞った超短期決戦型のコンビネーションなどが採用される傾向にあります。

(肘打ち、ハンマーパンチ、金的蹴り……etc)

 

ナイフ及びガンディフェンスに特化

海外の紛争地域や犯罪多発エリアでの軍事行動、警備業務などを想定していることから明らかなとおり、

銃器やナイフ、車両を使ったアプローチなど多角的なトレーニングメソッドが特徴です。

腰にハンドガンまたはナイフを装備した状態でのスパーリングやディフェンス・ドリル、

ライフルを装備した状態でのグラウンド・コントロールなど、通常の格闘技や護身術とは完全に趣を異にしており、

その目的は自衛よりも制圧・襲撃に特化していると言えるでしょう。

 

ハードコア・トレーニングのデメリット

短期集中で「本物のディフェンス・スキル」が身につくハードコア・トレーニングですが、

その高い実用性・即効性の裏には以下のような問題点があります。

・体力的なハードルが高く練習中の安全性が低い

・日本では過剰防衛となるスキルが多すぎる

・犯罪などへの悪用が避けられない

一つずつ見ていきましょう。

 

体力的に難易度が高く訓練内容が危険

軍事分野などを想定していることから明らかな通りある程度基礎体力が高いことが前提であり、

ハードな運動習慣や格闘技などの経験がなければ練習についていけない可能性があります。

(準備運動の段階で一般的な成人男性にとって強度が高すぎる動きがいくつも含まれています)

また一体多数や武装対非武装などの極限状態を想定したシチュエーション別トレーニングでは怪我のリスクが高くなる傾向にあり、

きちんと防具などを身に着けていても肋骨を折る、肩を脱臼するなどは珍しくありません。

 

日本国内では過剰防衛となるスキルが大半

極限状態での生存・抵抗を目的としているハードコア・トレーニングの技術体系では、

そのほとんどが法的にグレー、または完全に黒となるリスクを背負っています。

躊躇のない急所攻撃に始まり、ナイフや銃床・警棒などを用いた殴打なども含まれ、

相手を確実に制圧するため倒れた相手への執拗な攻撃なども当たり前のように指導されます。

これらは日本の法律において完全に正当防衛の域を超えたものであり、防衛のための技術ではなく、

攻撃・襲撃のためのテクニックという見方が妥当であり、凡そ実用的とは考えられません。

 

犯罪への悪用が避けられない

私が当ブログで動画や連続写真などを使って細かく技術を掲載しない理由の一つに、

「悪用されることを回避するため」というものがあります。

護身術に関わらずいかなる格闘技・武道においてもその技術は究極的に、

「如何にして人体を破壊するか」というテーマに収斂するものであり、

正しい思想・理念に基づいた指導・運用がなされなかった場合のリスクは計り知れません。

特に銃器・ナイフを用いたテクニックに重点を置いたハードコア・トレーニングの指導内容は、

もしも悪意ある人物が身に着けた場合はほぼ100%の確率で犯罪などに悪用されるため、

情報や知識の取り扱いには十分注意が必要と考えられます。


”防衛者”と”攻撃者”の微妙な境界

法的な側面での教育において頻出する例題として、

「武装した素人と丸腰の有段者」問題があります。

ナイフで武装した素人が、もしも誤って(おかしな言い方になりますが)空手の有段者をターゲットにしてしまった場合は、

果たしてどちらが”攻撃者”で、どちらが”防衛者”にあたるか、という問題です。

皆さんは、どちらが正解だと思われますか?

背後から襲う、刃渡りの大きな刃物を使うなどシチュエーションごとに見方は変わってきますが、

日本の法律ではほとんどの場合、刃物を持った者が”攻撃者”となります。

よって素手の有段者が身を守るためにナイフで武装した攻撃者を絶命させてしまったとしても、

正当防衛となり罪には問われないことになります。これは多少極端な例ですが、海外ではそれほど珍しくはないケースと言えます。

身を守るための技術を身に着けるのはとても大切なことですが、その能力は少なからず負の側面も抱えており、

暴力などの犯罪行為と表裏一体であることを忘れてはいけません。

あなたの目的が本当に身を守ることならば、身に着ける技術・知識は全て合法的な範囲で運用されるはずです。

”攻撃者”ではなく”防衛者”として生きるために出来ることは何か、常に自問自答し続けていく事こそが、

我々日本人が一人で安全に行えるハードコア・トレーニングなのかもしれません。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

【考察】近代護身ツール”クボタン”はなぜ流行らなかったのか【コラム】

いつも心に1人の助っ人外国人選手を。どうもサイコ田中です。

突然ですが皆さんは、「クボタン」または「クボタン護身術」というものをご存じでしょうか?

クボタンはおよそ50年前にアメリカで一人の日本人によって見出された近代護身用ツールであり、

それを用いた護身術が「クボタン護身術」と呼ばれています。

銃社会アメリカで生まれた実践的な護身術であるクボタン護身術ですが、

その知名度はクラヴ・マガなどと比べると著しく低く、学べる場所も極めて限定的という印象を受けます。

なぜクボタンはセルフディフェンス業界で覇権を握れなかったのでしょうか。


ツールのご利用は計画的に……

護身用ルールにまつわる記事では毎度のようにお伝えしていることではありますが、

ツールの所持と使用は、完全に個人の自己責任に委ねられています。

要するに、「買って持ち歩くのも使うのも勝手だけど、どうなっても知らないよ」ということです。

一般に日本国内において”護身用”と謳われている製品の多くは、

実際には軽犯罪法に抵触するものであり、気軽に所持したり持ち歩いたりするべきではありません。

また一部のツールは使い方を間違えると文字通り命の危険が伴うリスクを抱えており、

取り扱いには専門的な知識と訓練が欠かせません。

身を守るためとはいえ、過剰な殺傷力のあるものや明らかに自己防衛の目的を逸脱した道具は、

単なる凶器でしかなく、その背景にある思想は犯罪者のそれと大差はありません。

あなたの目的が本当に身を守ることで、相手を傷つけることでないのならば、

”護身用”を謳った危険なツールを購入、所持または携行するべきではありません。


クボタンが覇権を握れなかった5つの理由

ここではクボタンまたはクボタン護身術が、それほど普及していない理由について、

実用性など5つの項目に分けてお話ししたいと思います。

ここに述べているのはあくまで個人の考察に過ぎませんが、

様々な護身用ツールに共通する問題点についても言及しています。

ツールの導入をお考えの方や護身術に興味をお持ちの方はぜひ参考になさってください。

 

簡単に持ち歩けない

キーホルダーとして車のキーなどと一緒に持ち歩けるその手軽さと秘匿性の高さが売りのクボタンですが、

実際に持ち歩くのはそこまで簡単ではないかもしれません。

クボタンの大きさは丁度手のひらに収まる程度か、それより少し大きいものが一般的ですが、

先端が鋭利な形状をしているものはポケットに入れると歩き難くなりますし、

太すぎるものはそもそもポケットにちゃんと収まってくれません。

また市販されているクボタンの多くはその用途から明らかなように奇抜な形状のものが多く、

仮に職務質問を受けた際に所持品を調べられた場合、面倒なことになる可能性が高いと言えます。

(実際に所持していた時に職質を受けたことがありますが、当然ながら「キーホルダーです」では誤魔化せませんでした)

正当な理由を説明できないようなものは、持ち歩くべきではないでしょう。

 

あまりにも低すぎる即応性

自己防衛において、対応の素早さ――すなわち即応性は欠かすことのできないものです。

酔漢や明らかな敵意を持った攻撃者から危害を加えられそうになった時、

ツールを抜いて反撃するのが早いか、

黙って頭突きを入れるのが早いかは、わざわざ語るまでもないことです。

身を守る上で「”今そこにあるもの”を利用する」のは鉄則の一つに違いありませんが、

持ち物(ツール)に縛られるのは好ましくありません。

ヒックの法則(Hick’s law)で明らかにされている通り、

人は選択肢が多いと迷って反応が遅れる傾向にあります。

クボタンのようなツールを所持するのは「お守り」として意味があるのかもしれませんが、

それを使うことにばかり意識を向けてしまって、”今そこにある武器”を効果的に使えないのでは本末転倒です。

あなたはクボタンを握りしめて街を歩きますか?

攻撃を受けたとき、あなたの手の中にはいつもクボタンがありますか?

リアルファイトのリアリティというものを、もっと鮮明にイメージしましょう。

 

決して高いとは言えない実用性

実際にタクティカルペンやクボタンを全力でターゲットにぶつけたことのある人はわかると思いますが、

高確率で手の中からすっぽ抜けるか、インパクトの瞬間に手の中で動いてしまいます。

あなたがずば抜けて握力が強く、手汗を一切かかないマッチョマンなら使いこなせるかもしれませんが、

大多数の人にとって、表面がツルツルしていて細いものを力いっぱいターゲットに突き立てるのは、

容易ではありません。

親指でしっかり上から押さえつけたとしても、インパクトの衝撃で手から外れてしまうことは珍しくありませんし、

力いっぱい打ったにも関わらず、それほどダメージを与えられない可能性さえあるのです。

ダメージを与えるには頼りなく、操作性も高いとは言えない……そのようなツールをあえて持ち歩くのは賢い選択とは言えません。

もしも私がクボタンを持っているときに攻撃を受けたとして、

近くに消火器やパイプ椅子などがあれば、迷わずそれらを手に取るでしょう。

 

指導を受けられる機会や場所がない

クボタンというツールに出会ってから、私は血眼になって国内の公開セミナーを探しましたが、

数えるほどしか見つけることができませんでした。

クボタンを用いた護身術を積極的に指導または共有しようとしているサークル自体は少なくないものの、

やはりクラヴ・マガや一般的な護身術教室などと比較すると限定的と言うほかなく、

正しい使い方を学べる機会にはなかなか恵まれないというのが現状のようです。

本職のセキュリティなどを対象とした法人向けのセミナーではクボタンを用いる機会もあるかもしれませんが、

一般人が参加するのはほぼ不可能なため現実的とは言えません。

使い方のわからないものを持っていてもしょうがないので、半自動的に「選ばれない」ということが起こるのかもしれません。

(一般の方が多いサークルなどで「クボタン」という単語を出してもあまり通じません)

 

本来の使い方では効果が発揮できない

「実用性が低い」という点と重なる部分ではありますが、

クボタンを本来推奨されている用法で使おうとしても、それほど効果を実感できないという問題点があります。

クボタンはその形状と性質から、相手の手首や二の腕の小さな急所を圧迫し、

スマートに制圧するのが理想的な運用法となっていますが、

相手がシンプルに太っているとか、分厚いコートなどを身に着けているとうまくいきません。

また握りこんで殴打することも出来るとされていますが、

「だったら普通にグーパンチでいいじゃん」と思ったのは恐らく私だけではないでしょう。

結局私がクボタンにハマっていた当時に参加していたサークルで編み出した使い方は、

・相手の顔めがけてダーツのように投げつける

・キーチェーンやネックレスに繋げて振り回す

・ナイフを持っているように「見せかける」

など、凡そ本来の使い道とはかけ離れたものになってしまいました。

窪田先生には本当に申し訳ないと思っています。


クボタンの本当の使い方は誰も知らない?

まるで夢オチみたいな酷い締めくくりになってしまいますが、

クボタンの「本来の使い道」は世界でも限られた人物しか把握していないというのが通説のようです。

その形状・性質は見ての通り完全に「暗器」のそれであり、

本来の目的は護身や自衛などではなく、暗殺や隠密行動における敵性対象の鎮圧など、

極めて物騒な用途が想定されていたと考えられます。

また一般向けに流通しているクボタンの多くはペンや太めのマジックのような、

フレンドリーな(?)見た目であることが多いのに対し、

軍事目的で生産されている一部のモデルは鋭利な部分が多く、メリケンサックのように武骨な形をしています。

クボタンと同じようなコンセプトのセルフディフェンスツールは数多く開発・販売されていますが、

数が多すぎるため本来の使い道がわからないものは巷に溢れかえっています。

そうした「よくわからないもの」をよくわからないままに持ち歩くのは好ましくありませんし、

仮に本来の使い方を知っていたとしても、それは恐らく人には言えないようなものでしょう。

どんな道具も正しい使い方を学ばなければ有効活用できませんが、

ナイフや銃などのように使い方を知らないほうがいいかもしれないもの”があるということは、

いつも心に留めておきたいものです。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。